*1 SHIRASAKA YOSHIYUKI *2 FUNAI YUTA *3 SUZUKI SATORU *4 TAKEMURA MIYUKI *5 ICHIJO KAZUKI *6 KISHIMOTO HISANAO *7 LANGGUTH PETER *8 INOUE KATSUHISA 白坂 善之*1 鮒井 悠汰*2 鈴木 悟*3 竹村 美由記*4 一條 一貴*5岸本 久直*6 Langguth Peter*7 井上 勝央*8はじめに要 旨Key words:薬物吸収、相互作用、水分挙動、P-gp、モデリング&シミュレーションQuantitative evaluation of drug absorption and interaction by kinetically analyzing gastrointestinal water dynamics 抗体医薬をはじめとしたバイオ医薬に注目が集まる昨今にあっても、その圧倒的な利便性と安全性から経口医薬品への信望は依然として厚く、実際に世界の医薬品売上の70%以上を占めている。しかし、薬物の経口吸収性は投与条件や消化管内生理環境の影響を受け易いため、医薬品開発はもちろんのこと、臨床における適正使用の観点からも、多剤併用に伴う「薬物-薬物間相互作用」や、飲食に伴う「薬物-飲食物間相互作用」などを注視・予測する 薬物の吸収動態は消化管内での薬物濃度に依存するため、高精度な薬物吸収予測を行う上で、消化管内水分挙動を理解することは極めて重要である。そこで本研究では、水分吸収/分泌挙動とその薬物吸収動態変動への影響に関する詳細な解析を試み、その結果を基盤にした高精度な薬物吸収動態変動(相互作用)予測法の確立を 目指した。ラット消化管を用いた水分動態解析により、水分吸収に伴う薬物濃縮が、薬物の膜透過速度を上昇させ 吸収動態変動(薬物-飲料間相互作用など)を生じる可能性が示唆された。また、消化管内水分を組み込んだ モデル解析により、消化管からの薬物吸収量やその変動に対する高精度予測を実現する上で、部位依存的な水分量を定量的に考慮することの重要性が示された。以上の知見は、医薬品開発ならびに臨床における薬物吸収動態変動(相互作用)の予測精度向上に大きく貢献できるものと期待される。東京薬科大学 薬学部 薬物動態制御学教室 同 上 同 上 同 上 同 上 同 上Institute of Pharmacy and Biochemistry, Johannes Gutenberg-University Mainz, Mainz, Germany東京薬科大学 薬学部 薬物動態制御学教室ことは極めて重要となる。 通常、経口医薬品の消化管吸収動態は、膜透過速度や機能性タンパク質(トランスポーター/代謝酵素)活性などにより規定され、いずれも消化管内における薬物濃度に依存する1,2)。したがって、薬物が消化管内でどの程度の水分に溶解し、どの程度の濃度で存在するのかを理解することは、薬物の吸収動態やその相互作用を考える上で極めて重要となる3)。しかし、服用された水分はそれ自体が吸収される上、消化管内には生体液の分泌も生じるため、その吸収/分泌速度や部位差などを考慮した88消化管水分挙動解析に基づく薬物吸収動態変動(相互作用)予測法の確立
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