臨床薬理の進歩 No.41
130/216

*1 USHIJIMA KENTARO 自治医科大学医学部 薬理学講座 臨床薬理学部門、山陽小野田市立山口東京理科大学薬学部 薬剤学・製剤学分野*2 NAGANO TATSUYA 自治医科大学医学部 薬理学講座 臨床薬理学部門、自治医科大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座*3 TAGA NAOYUKI *4 TAKEUCHI MAMORU 自治医科大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座*5 KAWADA MASA-AKI 自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児心臓血管外科*6 OGAMI CHIKA *7 TSUJI YASUHIRO *8 AIZAWA KENICHI *9 FUJIMURA AKIO 牛島 健太郎*1 永野 達也*2 多賀 直行*3 竹内 護*4 河田 政明*5尾上 知佳*6 辻 泰弘*7 相澤 健一*8 藤村 昭夫*9はじめに要   旨Key words:肺血管抵抗、ニトログリセリン、ALDH2、肺高血圧、周術期管理PK/PD/PG analysis of nitroglycerin in infants with congenital heart disease and pulmonary arterial hypertension 先天性心疾患に対する外科的治療法および集中治療法の進歩により、1990年代以降、乳幼児期であっても安定した手術/治療成績が得られるようになった。しかし、今日でも乳幼児にとって長時間の開心手術侵襲の影響は小さくない。小児先天性目的 自治医大病院では、周術期における肺高血圧に対してニトログリセリン(GTN)を静脈内に持続投与している。しかし、小児に対するGTNの治療域や安全性に関するエビデンスは少ない。本研究では、小児肺高血圧を 対象としてGTNの薬物動態/薬力学解析を行い、さらにこれらに及ぼすALDH2遺伝子多型の影響を明らかにして、GTNの適正投与方法を確立する。方法 先天性心疾患に対する外科手術を受けた小児患者に対して、GTNを初期速度2 μg/kg/minから開始し、投与量は肺血管抵抗値(PVR)が30%低下するまで漸増した。経時的に血中GTN濃度を測定し、血行動態パラメータを記録した。また、PCR-RFLP法を用いてALDH2*2の有無を判定した。結果・考察 ALDH2遺伝子変異を有する小児患者では血中GTN濃度は上昇する一方、PVRの低下度が小さいことが明らかとなった。これは、ALDH2活性の低下により、GTNの生体内活性化が減弱するためと考えられる。ΔPVRを指標とした非線形回帰分析の結果、ALDH2遺伝子変異型群のEC50値は野生型群の11.6倍大であった。ALDH2遺伝子多型診断は、GTNの投与設計における有用な指標になる可能性がある。自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児手術・集中治療部富山大学大学院・医学薬学研究部(薬学)医療薬学研究室日本大学薬学部 薬剤師教育センター自治医科大学医学部 薬理学講座 臨床薬理学部門          同   上心疾患では、左右短絡や肺小動脈の攣縮により肺高血圧を合併する症例が一定の割合で存在している。このような症例では心不全や肺合併症を引き起こしやすく、手術後に肺高血圧発作が出現することがあるために、重症例の予後は不良である。 肺高血圧の治療には一酸化窒素(NO)吸入や、シルデナフィルやボセンタンの有効性が報告されて116肺高血圧を伴う小児先天性心疾患患者におけるニトログリセリンのPK/PD/PG解析

元のページ  ../index.html#130

このブックを見る