臨床薬理の進歩 No.41
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表3 ΔPVR を指標とした非線形回帰分析Emax(Wood unit. m2)EC50(ng/mL)Emax(Wood unit. m2)EC50(ng/mL)GENEθAIC = Akaike's Information Criterion(A)ベーシックモデルパラメータ(B)ALDH2遺伝子多型を組み込んだモデルパラメータ考  察 先天性心疾患の周術期における肺高血圧は重篤な合併症の一つである。GTNを含む血管拡張薬の有効性に関する研究は古くから行われているが、その多くは心臓カテーテル検査中に行われたものである。本研究のように、肺高血圧を合併した先天性心疾患に罹患した新生児を対象に、周術期にGTNを投与してPAPやPVRを用いてその効果を評価した報告はない。また、新生児におけるGTNの効果に及ぼすALDH2遺伝子多型の影響についても報告がなく、本研究によって初めて明らかになった。 本研究において、血中GTN濃度はALDH2遺伝子変異型群の方が野生型群よりも高値で推移し、4 μg/kg/min投与後の血中濃度には2群間に有意な差を認めた。酵素反応に基づくGTNの生体内活性化(NOの遊離)には、ALDH2はその5〜10%に関与すると報告されている7)。ALDH2以外にも、グルタチオンS-トランスフェラーゼ等の酵素がGTN代謝に寄与することが知られている8)。したがって、変異型群における血中GTN濃度上昇の要因の一部分は、ALDH2活性の低下によるものと考えられる。 本研究では、GTN持続投与によって新生児のPVRが有意に低下した。これはGTNから遊離したNOにより肺動脈が拡張して、肺循環に血液が流れやすくなっていることを示唆している。一方、推定値-0.6569.023標準誤差0.0916.119AIC = 56.3推定値-1.11712.50611.602標準誤差0.1476.0534.271AIC = 21.6GTNを投与してもSVRが低下していないこと、およびsABPの低下が僅かであったことから、体動脈に対するGTNの影響は少なく低血圧など体循環に対する有害作用を起こしにくいものと考えられる。 GTN は体内で代謝される過程でNOを供給し、その血管拡張作用を発揮する。また、血中GTN濃度が約1μM(227.1 ng/mL)以下の場合、GTNの生体内活性化は主にALDH2に依存するとの報告がある9)。本研究において、4μg/kg/min投与終了時の血中GTN濃度は、全ての症例で0.4μM(92 ng/mL)未満であった。したがって本研究では、主にALDH2がGTNからNOの遊離を担っていると推察される。これらの知見から、ALDH2遺伝子の変異型を有するとGTNの生体内活性化が減少する結果、血中GTN濃度の上昇および薬理作用の減弱を来たし、EC50値は11.6倍大きくなったものと考えられる。 GTNの血管拡張作用に対するALDH2遺伝子多型の影響については、本研究と同様に野生型の方がその作用が大であるとする報告がある一方10,11)、遺伝子多型の影響は認めないとする報告もある6,12)。これは、対象者の集団(健常者や患者)、GTN投与量および投与方法(静脈内投与や舌下投与)、血管拡張作用の評価方法(上腕動脈の拡張反応や上腕動脈径)がそれぞれ異なることが関与しているものと思われる。本研究では、ALDH2遺伝子多型がGTNの薬理作用に影響を及ぼすという知見が得られたが、過去の報告と比較して、1)対象者が1歳未満の小児に限られている、2)GTNを持続静脈投与している、3)様々なGTN投与速度を用いている、4)血管抵抗を算出している、5)血中GTN濃度を測定している、という点が異なっている。 最後に本研究におけるlimitationsとして、1)ALDH2遺伝子多型の頻度に性差を認めていること、2)対象者が全て1歳未満の乳児であること、が挙げられる。薬物動態や薬理作用に性差を認めることがいくつかの薬物で知られている。また、小児患者であっても学童期と乳幼児期では種々の生理機能が異なる。本研究で認めたALDH2遺伝子多型依存的なGTN 122

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