臨床薬理の進歩 No.41
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表1 喘息、ACO、COPD患者(replication cohort)の患者背景性別, 男性年齢 (歳)Pack-years1秒率予測1秒量好酸球 (/μL)好中球 (/μL)数値は中央値(四分位範囲)または人数(割合)を示す。喘息(n = 30)8(27)43(40-50)0(0-5)76.3(73.0-84.4)92.8(82.7-99.7)347(236–499)3704(2920–5026)結  果COPD(n = 30)27(90)74(70-78)46(25-71)52.7(42.0-59.5)64.2(42.8-82.4)161(92–205)4170(3270–5026)ベンラリズマブ投与患者においては、ベンラリズマブの投与タイミングに合わせて、投与直前、8週、16週、24週において採血を行い、末梢血より磁気ビーズ法にてTリンパ球を採取した。なお、本研究内容は静岡県立総合病院倫理委員会の承認を得て実施し、対象患者より書面にて同意を取得した。遺伝子発現定量 PBMCまたはTリンパ球よりtotal RNAを抽出し、cDNA合成後に定量的RT-PCR法にて、GLCCI1、Nrf2、HDAC2遺伝子発現量を定量した。定量にはPowerUp SYBR Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific)を用い、内在性コントロールにはβ-actin遺伝子発現量を用い、ΔCt法にて相対的発現量を算出した。統計解析 各データは中央値(四分位範囲)または人数(割合)で示した。miRNAおよび遺伝子発現量は、対数(log2)で示し各発現量の平均値が0となるように標準化を行った。群間比較は、連続変数ではKruskal-WallisまたはMann–Whitney U testを用い、カテゴリー変数ではFisher’s exact testを用いた。また、対応のある検定にはWilcoxon signed-rank testを用いた。ACO患者の診断バイオマーカーの構築におけるバイオマーカーの有用性評価には、診断名(ACO、喘息またはCOPD)を目的変数とした多項ロジスティック回帰分析を用い、この回帰モデルよりreceiver operating characteristic(ROC)曲線を描き、曲線下面積(AUROC)を算出した。COPD患者における治療層別化バイオマーカーの構築ACO(n = 30)28(93)71(66-78)29(16-40)57.5(46.0-65.1)61.6(48.2-77.3)415(318–582)3545(3091–4070)また、回帰モデル作成の際のバイオマーカーの評価には、ランダムフォレストを用い変数重要度を算出した。P<0.05を有意差ありと判断した。臨床研究1:ACO患者の診断バイオマーカーの構築ACO診断バイオマーカーとしてのmiRNAの同定 PCRアレイを用い、discovery cohortにてmiRNAの定量を行った結果、84の測定対象の内、52のmiRNAが検出された。ACO患者と喘息患者において2倍以上の発現変動が認められたmiRNAは9つ(miR-148a-3p、miR-15b-5p、miR-191-5p、miR-21-5p、miR-223-3p、miR-23a-3p、miR-24-3p、miR-26a-5p、miR-26b-5p)であった。 Replication cohort(表1)において9つのmiRNAの定量を行い、多項ロジスティクス回帰分析の結果、5つのmiRNA(miR-148a-3p、miR-15b-5p、miR-223-3p、miR-23a-3p、miR-26b-5p)がACO患者において特徴的な発現パターンを示し(図1)、有意にACO患者を鑑別可能であることが示唆された(表2)。パスウェイ解析 ACO患者において特徴的な発現パターンを示した5つのmiRNA(miR-148a-3p、miR-15b-5p、miR-223-3p、miR-23a-3p、miR-26b-5p)が制御する遺伝子より、ACO患者に特徴的なKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)パスウェイを推定した。135135

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