臨床薬理の進歩 No.41
152/216

量現発ANRm図5 本研究で明らかとなったバイオマーカーと治療層別化に向けた可能性ベンラリズマブ治療開始後(週)GLCCL1,Nrf2, HDAC2分子メカニズムに着眼しACOの病態を評価した報告は少ない。本研究において我々は、喘息とCOPDの両方の特徴を有するACO患者の診断における新たなバイオマーカーの構築に成功し、ACO患者の病態が血漿中miRNAおよび血清中ペリオスチンおよびYKL-40濃度によって特徴付けられることを明らかにした。これにより、COPD患者において吸入ステロイド薬などの喘息治療薬を用い治療が可能な患者を層別化することが可能になるものと考えられ、COPD患者における予後改善に対し大きく貢献図4 ベンラリズマブ投与患者におけるGLCCI1、Nrf2、HDAC2遺伝子発現量の変動箱は四分位範囲、箱中の横線は中央値、ひげは四分位範囲の1.5倍以内にある最小値または最大値の範囲を示す。図中の数値は各時点の0週に対するWilcoxon signed-rank testのP値を示す。できるものと予想される(図5)。 miRNAをバイオマーカーとして用いACO患者の病態を特徴付けた報告は本研究が初めてである。本研究で見出されたmiRNAは、ACO診断のバイオマーカーとなるだけでなく、関連が推察されるパスウェイを足掛かりにACOの病態をより深く解明することにも役立つものと考えられる。例えば、関連が示されたTGF-beta signalingパスウェイは気道のリモデリングに関与することが報告されており7)、このような情報を集積し、ACO患者との関連を検証138

元のページ  ../index.html#152

このブックを見る