臨床薬理の進歩 No.41
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Brent Tetri Labについて写真5 1932年に建てられたセントルイス大学の附属病院現在でも病院および医局として使われている。ルイス市民のソウルフードとして、90年近くの歴史を誇るTED DREWESのフローズン・カスタードというアイスクリームがあります。文字通りカスタードのアイスクリームですが、その素朴な(と言ってもアメリカなので甘いです)味だからこそ現地の人々に永く受け入れられ、夏はもちろんのこと冬でも店には行列ができるほどの盛況ぶりです。そしてSLUの医学系研究室が集まるビルディング(Edward A Doisy Research Center)でも毎年6月末にIce cream socialという交流イベントが開かれますが、この時に提供されるのもこのTED DREWESのフローズン・カスタードでした。 今回私の留学を引き受けてくれたDr. Brent Tetriはセントルイス大学消化器肝臓内科学の主任教授です。専門は肝臓疾患で、特に最近では非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の新薬に関する臨床試験を主導する立場にあります。彼の研究室に留学することになったきっかけは、日本での私の指導者である本学肝臓内科の小林良正先生が、かつて同大学に留学していた頃の同僚というご縁で紹介して頂きました。この教室の特色として肝疾患のみならず消化器疾患全般にわたる多くの臨床試験を行っていることが挙げられます。そのため専属の総合臨床研究センター(GCRC)を有し、10名以上のCRCがここで実施される多くの臨床試験を支えています。主任教授とはいえDr. Tetriの仕事量は膨大で、臨床研究に関する業務の他にも通常の肝臓外来、病棟回診、カンファレンス、さらには経皮的肝生検や内視鏡検査まで自らこなしており、朝早くから夜遅くまで働いていました。ちなみに普段は多忙を極めるDr. TetriもThanks Givingやクリスマスの長期休暇はしっかり休むあたりはさすがアメリカ人だと感じました。 このようにDr. Tetriの仕事の大部分は臨床および臨床研究で占められているためか、基礎研究室は逆にこぢんまりとし、構成員は私の他にPhDのロシア人研究員とインド人テクニシャンの合計3名でした。ふたりともアメリカには20年以上住んでいるため、とてもアメリカナイズされていますが所々でお国柄が出ていて面白かったです。ロシア人研究員はいろいろな実験手技を一から教えてくれたり、クリスマスの時期になると自宅に招いてパーティーをしてくれたりと家族ぐるみでお付き合いをさせて頂きました。インド人テクニシャンは私とは親子ほどの歳の差がある女性で、普段から何かと気にかけてくださり、研究室にこっそりお菓子を持ち込んで分けてくれたり(研究室内は飲食禁止でした)、建物内で試薬や物品のプロダクトショーがあると必ず声をかけてくれて説明もそこそこに、無料で振る舞われるコーヒーやドーナッツをたくさん取り分けてくれたりしました。その代わりに、いつも彼女の糖尿病相談を受けていましたが、アメリカならではの極甘のお菓子やドーナッツを食べながら複雑な心境だったのをよく覚えて158

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