臨床薬理の進歩 No.41
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対象と方法いる。ヒト死後脳の検討では、ジスキネジアを有するパーキンソン病患者において、アデノシンA2A受容体の発現量が増加する傾向があった1)。アデノシンA2A受容体リガンドを用いたin vivo positron emission tomography(PET)研究では、パーキンソン病患者において、アデノシンA2A受容体の発現量が増加する傾向があった2,3)。小動物を用いた実験では、アデノシンA2A受容体作動薬の投与によって生じた運動障害は、アデノシンA2A受容体拮抗薬の投与により改善された。パーキンソン病モデル動物を用いた実験では、アデノシンA2A受容体拮抗薬の投与により、運動障害は改善された。これらの研究結果は、アデノシンA2A受容体がパーキンソン病の運動症状の修飾に関与していること、アデノシンA2A受容体がパーキンソン病治療のターゲットになること、を示している。 アデノシンA2A受容体拮抗薬であるistradefyllineが、パーキンソン病治療薬として2013年に本邦で保険適用となった。いくつかの臨床研究から、istradefyllineはドパミン製剤の補助薬としてパーキンソン病の運動症状の改善やオフ時間の短縮に有効であると報告される4〜6)。しかしながら、そのような臨床効果は患者間で大きく異なる傾向があり、istradefyllineがどのようなパーキンソン病患者で有用であるのか、必ずしも明確ではない。 このような中で近年、従来のPETリガンドと比べて、アデノシンA2A受容体に対して優れた親和性と選択性を有する11C-preladenantが開発された。そして、11C-preladenant PETを用いることにより、ヒト生体において、より高精度にアデノシンA2A受容体を可視化および定量測定することが可能となった。本研究の目的は、パーキンソン病患者に対して11C-preladenant PETを行うことにより、パーキンソン病におけるアデノシンA2A受容体の病態解析を行い、パーキンソン病診療におけるアデノシンA2A受容体拮抗薬の使用方法に明瞭なエビデンスを与えることである。 本邦では、パーキンソン病患者に対して1日1回、istradefylline 20 mgまたは40 mgの単回経口投与が推奨されているが、そのような投与量における実際のアデノシンA2A受容体占拠率は不明瞭である。そこで我々のグループは、パーキンソン病におけるアデノシンA2A受容体の病態解析の第一歩として、istradefyllineのアデノシンA2A受容体に対する占拠率を測定した7)。具体的には、パーキンソン病患者を対象に11C-preladenant PETを行い、istradefylline 20 mgと40 mgにおけるアデノシンA2A受容体占拠率およびED50を算出した。本稿では、研究成果とともに今後の展望について述べる。1)対象 パーキンソン病患者10例(平均年齢74.9 ± 8.2歳)と健常者6例(平均年齢76.8 ± 7.1歳)を対象に、11C-preladenant PETを行った。全てのパーキンソン病患者は、ドパミン製剤を含む抗パーキンソン病薬を内服中であった(表1)。全てのパーキンソン病患者と健常者は、中年期以降に喫煙歴を有していない。 尚、本研究は東京都健康長寿医療センター倫理委員会の承認を受けて実施した(H28-49)。また、全ての被験者から書面でのインフォームドコンセントを取得した。2)研究プロトコールとistradefylline パーキンソン病患者10例を、ランダムにistradefylline-20 mg群(n = 5)とistradefylline-40 mg群(n = 5)に分類した。Istradefylline-20 mg群ではistradefylline 20 mgを単回経口投与され、istradefylline-40 mg群ではistradefylline 40 mgを単回経口投与された。そして、istradefylline内服の前後で11C-preladenant PETを行った。 パーキンソン病患者のスケジュールとして、10時に1回目の11C-preladenant PETを行い、11時30分にistradefylline内服、13時に2回目の11C-preladenant PETを行った。一方、健常者は10時に11C-preladenant PETを1回だけ行った。16

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