臨床薬理の進歩 No.41
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*1 YAMAGUCHI TAKEFUMI 東京歯科大学市川総合病院眼科、慶應義塾大学医学部眼科学教室山口 剛史*1 はじめに要   旨Key words:生体内微小環境、細胞応答、ミトコンドリア、角膜内皮細胞、オミクス解析Pathological processes in aqueous humor due to iris atrophy predispose to  角膜内皮細胞(Corneal endothelial cells; CEnC)は角膜の内側を単層でカバーする六角形細胞で、ポンプ機能とバリア機能から角膜の透明性維持に寄与している1)。CEnCは分裂能を持たず、障害されたときは細胞を大きくして代償することが知られている2)。ヒトにおいて、CEnC年間減少率は、正常眼で約0.5%だが、白内障術後には2.5%、角膜移植術後には5-9%、緑内障術後は10%前後と様々な病態で上昇する3〜5)。角膜には免疫寛容early corneal graft failure in human and mice目的 ヒトにおける角膜内皮細胞減少で起きる前房水微小環境変化と細胞応答を多層オミクス解析で生物学的プロセスを解明する。方法 水疱性角膜症と正常眼の角膜内皮細胞のトランスクリプトーム解析(水疱性角膜症7眼・正常アイバンク眼5眼)と前房水のプロテオーム解析(水疱性角膜症5眼・正常アイバンク眼5眼)を行った。結果 ヒトプロテオーム解析で1162種類のタンパク質の定量ができ、水疱性角膜症では正常と比較して補体活性関連など150種が有意に上昇し、糖代謝関連など115種が有意に低下した。有意な変化を示すタンパク群から、 水疱性角膜症では「免疫細胞を介する炎症」「ストレス応答」が有意に上昇し、「単糖類生成経路」「NAD/NADH 代謝経路」「ATP生成経路」が有意に低下していた。一方、ヒトトランスクリプトーム解析では40448遺伝子のうち、 2385の発現が亢進し2880が低下した。水疱性角膜症で亢進する生体経路として「細胞外マトリックス機構」「細胞 接着」「炎症反応」があり、低下する経路として「糖代謝」「低酸素応答」「ミトコンドリア電子伝達系」「酸化 還元系」があることがわかった。さらに水疱性角膜症で角膜内皮細胞の細胞老化マーカーのP16INK4aが91.6倍(P=2.43×10-6)、p27Kip1が4.22倍(P=1.07×10-7)に発現変化があることがわかった。結論 水疱性角膜症では、単に角膜内皮細胞が減少するだけでなく、特定の生物学的プロセスを経て細胞老化がその病態に関与することが示唆された。があり、円錐角膜などリスクの低い患者への角膜移植の10年生存率は90%を超えるが、CEnCが減少し透明性を失う水疱性角膜症への角膜移植の5年生存率は30-55%、10年生存率は20-40%と長期予後は悪い6)。その最も多い原因はCEnCの自然減少で29-40%、角膜拒絶反応も21-27%と多い7)。したがって、角膜移植後のCEnC減少は今後解決しなければならない重要な臨床上の問題といえる。重要なことはCEnCの減少は同一疾患の間でも患者間に大きな差があるということである。近年、我々は、術前に虹彩萎縮がある患者でCEnC減少が67虹彩萎縮に伴う前房水の微小環境の病的変化は角膜移植片の早期機能不全につながる

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