ABLow protein levelLow cytokine levelNo immune cellmitochondria”、1つのミトコンドリアがもう1つのミトコンドリアが囲い込む所見が報告されている27)。 電子顕微鏡でみられたミトコンドリア異常構造と一致して、CEnCの網羅的発現遺伝子解析はミトコンドリア関連遺伝子の変化を示した。Fuchs角膜内皮ジストロフィ関連遺伝子のZEB1とSLC4A11ではなく、ATP synthetaseのサブユニットで外的ストレスに対するミトコンドリア反応を保つSIRT1を制御するATP5遺伝子24)の発現低下がみられた。CKMTはTCA回路や解糖系などのエネルギー代謝で重要な分子の発現低下があったが、この低下はクレアチニン経路を経てATP産生を変化させることがわかっている28)。Coiled-coil-helix coiled-coil helix domain containing 10(CHCHD10)は筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子の1つとして知られており、単一遺伝子機能不全で、ミトコンドリアのクリステ破壊を起こし、酸化図5 水疱性角膜症の病態機序(A)正常眼では虹彩が健常で、前房水のタンパク質/サイトカイン濃度は低値で炎症細胞はみられない。このような環境下でCEnCのミトコンドリアは健常でサイトカイン受容体の発現は低い。(B)水疱性角膜症では、虹彩萎縮があり、虹彩組織中のIL-6、MCP-1やLIFが高い。同時に房水血管柵が破綻しており、前房水のタンパク質濃度は高く、補体活性も上昇し免疫細胞が増加している。前房水のサイトカイン濃度も上昇しており、CEnCはサイトカイン受容体の発現が増え、細胞内のミトコンドリアは空胞変性をきたし膜電位も低下し細胞内代謝異常や酸化ストレスを強く受け細胞老化が加速する。長期間かけてCEnCは減少して水疱性角膜症をきたすこととなる。虹彩萎縮に伴う前房水の微小環境の病的変化は角膜移植片の早期機能不全につながるストレス後のミトコンドリア維持が不能になると報告されたが29)、今回水疱性角膜症で有意に低下していることがわかった(3.70倍, P=3.53×10-5)。さらに、Solute carrier family 25 member 25 (SLC25A25)の機能不全はエネルギー産生障害がでることが報告されているが30)、水疱性角膜症のCEnCで有意に低下していた(6.19倍, P=1.64×10-7)。SLC25A25はミトコンドリア内膜のCa2+感受性ATP-Mg2+/PiキャリアでCa2+サイクルをまわすのに必要なATP制御に重要な役割を果たしている31)。NAD+の生物学的研究により加齢性疾患の病因が次第に明らかになり23)、NAD+の中間代謝物であるNMNの投与は、糖尿病、網膜/神経性疾患、認知症、心臓病などのミトコンドリアの機能の改善を介して、これらの加齢性発病機序に予防あるいは治療的効果があったと報告されている23)。 本研究の限界点を述べる。1つは、多層オミクス77
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