臨床薬理の進歩 No.42
131/228

*1 SUZUKI YOSUKE *2 TANAKA RYOTA *3 KOYAMA TERUHIDE *4 ODA AYAKO *5 SHIBATA HIROTAKA *6 MIMATA HIROMITSU *7 ITOH HIROKI *8 OHNO KEIKO Physiologic factors associated with OATP1B activity in vivo 薬物トランスポーターの一種であるorganic anion transporting polypeptides(OATP)1Bは、主に肝臓の類洞側膜に発現し、アニオン性化合物の取り込みに関与している。代表的なOATP1Bの基質薬としてHMG-CoA還元酵素阻害薬が挙げられ、in vivoでのOATP1B活性がHMG-CoA還元酵素阻害薬の薬物動態に大きく影響することが報告されている。また、近年上市されたC型肝炎治療薬の多くがOATP1Bの基質となることが知られており、薬物動態がOATP1B活性に依存する医薬品が増加してきている。そのため、個別化療法に基づく医薬品鈴木 陽介*1 田中 遼大*2 小山 晃英*3 小田 絢子*4柴田 洋孝*5 三股 浩光*6 伊東 弘樹*7 大野 恵子*8はじめに要   旨 Organic anion transporting polypeptides(OATP)1B活性は遺伝的、環境的、および生理的要因によって 変動すると考えられる。生理的要因については、尿毒症物質や炎症性サイトカインがOATP1B活性を低下 させることがin vitroで報告されているものの、これらのin vivoでの影響は明らかにされていない。本研究では、 まずOATP1Bの内在性基質であるcoproporphyrin-I(CP-I)とOATP1B1遺伝子多型の関係を明らかにし、OATP1Bの内在性基質としてのCP-Iの高い有用性を示した。そして、関節リウマチ患者におけるOATP1B 活性の個人差に関連する生理的要因として3-carboxy-4-methyl-5-propyl-2-furanpropanoic acid(CMPF)を見出し、 CMPFの蓄積が認められる患者では、OATP1B活性の低下が生じている可能性を示した。これらの知見は、 患者個々のOATP1B活性の予測と、OATP1Bの基質薬の至適投与の実現に有用であると考えられる。明治薬科大学 薬剤情報解析学研究室大分大学医学部附属病院 薬剤部京都府立医科大学 地域保健医療疫学明治薬科大学 薬剤情報解析学研究室大分大学医学部 内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座大分大学医学部 腎泌尿器外科学講座大分大学医学部附属病院 薬剤部明治薬科大学 薬剤情報解析学研究室の適正使用を推進する上で、OATP1B活性を評価することが重要視されてきている。 OATP1B活性は遺伝的、環境的、および生理的要因によって変動すると考えられる。遺伝的要因として、OATP1B1におけるアミノ酸置換を伴う一塩基多型である388A>G(rs2306283; c.A388G, p.N130D, exon 5)と521T>C(rs4149056; c.T521C, p.V174A, exon 5)が知られており、これらによりOATP1B1*1a(c.388A-c.521T)、OATP1B1*1b(c.388G-c.521T)、OATP1B1*5(c.388A-c.521C)およびOATP1B1*15(c.388G-c.521C)の4つのハプロタイプが構成される1)。OATP1B1*5とOATP1B1*15はOATP1B1活性を低下させることKey words:OATP1B、トランスポーター、coproporphyrin-I、遺伝子多型、炎症性サイトカイン117OATP1B活性に及ぼす生理的要因の評価

元のページ  ../index.html#131

このブックを見る