方 法しないため、血漿濃度に対し脳脊髄液の濃度は5%未満と低く、大量VP-16投与を実施した後の髄液中濃度は0.1-0.5 μg/mL未満と報告されている6)。In vitroではVP-16の細胞毒性を十分に示す濃度として0.1-10 μg/mLであることが報告されており、全身投与での髄液中有効血中濃度達成は困難であることがわかっている。そこで、VP-16の脳室内投与が海外で実施されており、髄液中PK解析の結果、血漿中濃度の平均81±64倍(範囲:10-212倍)と報告している7)。 近年、VP-16の脳室内投与はAT/RTや胎児性脳腫瘍の再発に有効性が期待され、いくつかの臨床試験で用いられており4,5)、日常診療においても有効性が期待できる患者に遭遇することは希ではない。しかしながら、我が国においてVP-16の脳室内投与は用法として承認されていないため、そのような症例に投与ができていない。そこで、我が国におけるVP-16脳室内投与の髄液PK解析データを収集するため、髄液濃度測定系の確立を行った。東京都立小児総合医療センター倫理審査委員会による臨床上の必要性の承認を受けてVP-16脳室内投与を実施された症例の保存髄液を用いて、新たに立ち上げた測定系にて髄液中薬物濃度測定を行い、PK解析を実施した。1. 測定系の確立実施機関 測定系の確立及びVP-16髄液中濃度測定は、株式会社住化分析センターに委託し実施した。試験材料 VP-16は東京化成工業株式会社、Etoposide-d3(内標準物質(I.S.))はToronto Research Chemicals Inc.から入手した。ヒトブランク脳脊髄液は、株式会社ケー・エー・シーから入手した。メタノール及びアセトニトリル(高速液体クロマトグラフ用)は、それぞれナカライテスク株式会社及び関東化学株式会社から入手した。ぎ酸(試薬特級)は、富士フイルム和光純薬株式会社から入手し、水は超純水製造装置にて調製したものを使用した。 測定条件(LC/MS/MS) 高速液体クロマトグラフ(LC) LCはLC-10Aシステム(株式会社島津製作所)を使用した。分析カラムはUnison UK-C18、2.0 mm ID.×20 mm L.、3 μm(インタクト株式会社)を温度設定40 ℃で使用した。移動相Aは0.1%ぎ酸水溶液、移動相Bはメタノールを用いた。移動相AとBを容量比70:30から5:95まで変化させるグラジエント法で、流速0.4 mL/minで溶出させた。 質量分析装置(MS/MS) MS/MSはAPI4000(AB Sciex Pte. Ltd.)を使用した。Etoposide(m/z 589.3→435.3)及びEtoposide-d3(m/z 592.8→436.2)をelectrospray ionization(ESI)法、multiple reaction monitoring(MRM)mode、positive ion detection modeで測定した。前処理操作方法 標準溶液及びI.S.溶液の調製方法 標準原液(Etoposide,1 mg/mL)及びI.S.原液(Etoposide-d3,1 mg/mL)をメタノールを用いて調製し、これをメタノールを用いて希釈して標準溶液(15、50、150、500、1500、5000、15000及び50000 ng/mL)及びI.S.溶液(2500 ng/mL)を調製した。 添加検量線試料及びQC試料の調製方法 ヒトブランク脳脊髄液をポリプロピレン製マイクロチューブに25 μL分取し、標準溶液(ブランク及び0 ng/mL試料にはメタノール)5 μLを添加し、添加検量線試料(ブランク、0、3、10、30、100、300、1000、3000及び10000 ng/mL)、及びQC試料(30、300及び3000 ng/mL)とした。定量下限濃度(LLOQ)は3 ng/mL、定量上限濃度は10000 ng/mLである。128
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