B図5 IPAH患者由来PASMCsにおけるNFA感受性Cl-チャネル電流IPAH患者由来PASMCsにおいてCl-チャネル電流を測定した。 A:IPAH患者由来PASMCsで観察されたNFA非存在下および存在下におけるCl-チャネル電流。各3例の実験結果より、典型的な電流原図を示した。B:IPAH患者由来PASMCsで認められたCl-チャネル電流の電流-電圧関係。データは、各3例の平均値±標準誤差(mean±S.E.)で示した。BA考 察 Cl-チャネルは広範な組織に分布し、細胞容積調節、上皮性分泌、神経伝達、筋収縮などの多彩な生理機能を担っている。Cl-チャネルファミリーは、電位依存性Cl-チャネル、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)チャネル、Ca2+活性化Cl-チャネル、リガンド作動性Cl-チャネルの4種類に大別される6)。電位依存性Cl-チャネルを構成するCLCN遺伝子群には、9種類の分子(CLCN1〜CLCN7、CLCNKA、CLCNKB)が含まれる。CLCN電流の電気生理学的特性は、以下の通りである6〜8)。CLCN1電流は脱分極によって活性化される。CLCN2電流は、過分極によって活性化し、内向き整流性を示す。CLCN3電流は、過分極および脱分極によって活性化されるが、+80 mVより高電位側では時間依存的な不活性化が起こる。CLCN4とCLCN5電流は、+20 mV以上の脱分極によって活性化し、強い外向き整流性を示す。CLCN7電流は、脱分極刺激によって活性化し、強い外向き整流性を示す。CLCNKAとCLCNKB電流の電位依存性は弱い。また、Cl-チャネル阻害薬のCLCN電流に対する作用は、以下の通りである6〜8)。NFAは、CLCN電流を全般的に抑制する。DIDSは、CLCN3とCLCN7電流を阻害するが、CLCN2とCLCN5電流は阻害しない。本研究において、IPAH患者由来PASMCsで観察されたCl-チャネル電流の電気生理学的・薬理学的特性は、①過分極および脱分極によって活性化された、②内向き整流性を示した、③NFAによって抑制された。加えて、IPAH患者由来PASMCsの増殖におけるNFA感受性およびDIDS抵抗性も考慮すると、IPAH患者由来PASMCsで認められたCl-チャネル電流は、CLCN2チャネルを介したものであることが示唆された。この結果は、CLCN2発現解析の結果とも一致した。本研究によって、PASMCsにおけるCLCN2チャネルの機能発現が証明されたと考えられる。 PAHは、PASMCsの過収縮(攣縮)や肥厚(リモデリング)によって起こる。これらの病態形成には、過度の[Ca2+]cyt上昇が密接に関連している。そのため、PAHにおけるイオンチャネルの発現変動が注目されている9)。これまでに我々も、PAH患者由来PASMCsにおいて、受容体作動性Ca2+チャネル(TRPC6)10)、ストア作動性Ca2+チャネル(Orai1、Orai2、STIM2)11)、大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネル12)、Ca2+感受性受容体13)などの発現機能変化を明らかにしてきた。さらに、それらを分子標的とした新規PAH治療薬の可能性も提示してきた11,13)。現在までに、PASMCsのCl-チャネルとして、電位依存性Cl-チャネル(CLCN3)や165
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