臨床薬理の進歩 No.42
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考  察謝  辞 本研究にてFABP4がヒト、マウス筋細胞、またヒト筋細胞においてインスリン抵抗性に強く関与することを明らかにすることができ、糖尿病の病態解明および病態診断に大きく貢献すると考えられた。またFABP4が新たな糖代謝のマーカーとして、日常臨床に貢献することも考えられた。 これまでの報告では、健康成人では糖負荷試験の際に食後のFABP4は低下することが報告されているが、糖尿病状態での報告は無い9)。本研究にて糖尿病患者では食後にFABP4の抑制が起こりにくいことが示唆された。食後の血中FABP4高値がインスリン抵抗性、高血糖に関与している可能性が示唆された。また、肝細胞を用いた研究にてFABP4がインスリンシグナルである、Aktの活性化を抑制することが報告されている6,7)。本研究結果から、筋細胞でも同様にインスリンシグナルの抑制が起こると考えられた。さらにFABP4は筋細胞の糖取込み能を低下させ、インスリン抵抗性物質として糖尿病の病態に関与していることが示唆された。 FABP4阻害薬が糖代謝を改善させることが報告されているが7)、現在、市販されているFABP4産生阻害薬としてはマクロファージからの産生を抑制する薬剤があり、悪性リンパ腫の治療薬として臨床応用されている。しかし、免疫系への影響のために糖尿病の治療薬としては適応が困難と考えられる。本研究にてFABP4の筋肉への作用が証明され、筋肉に特異的なFABP4阻害薬の開発に繋がり、糖尿病の治療薬として候補となることが考えられた。今後、FABP4がインスリン抵抗性改善のための新規の治療標的となり、その筋細胞への作用を阻害する薬剤の創薬が行われれば、世界中の糖尿病の日常臨床に大きく貢献すると考えられる。これらの研究により、今後の創薬につながれば、臨床薬理学の発展に大きく貢献すると考えられた。 本研究の追行にあたり、研究助成を頂きました、公益財団法人臨床薬理研究振興財団に厚く御礼を申し上げます。173173

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