臨床薬理の進歩 No.42
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 2019年に発生したCOVID-19感染は瞬く間に全世界に広がり、これまで世界で1億4千万人以上が感染しています。このような感染症パンデミックで思い出されるのが1918年から1920年にかけて流行したスペインかぜです。当時の世界の人口の約1/3が感染し、有効な治療法がなかったために、数千万人が亡くなったとされています。しかし、今回は欧米の製薬企業がCOVID-19感染予防薬としてワクチン開発を急いだ結果、2020年末より欧米を中心にワクチン接種が可能になり、わが国でも2021年2月中旬より接種が開始されました。これを機にCOVID-19に対する集団免疫が確立し、一日も早くCOVID-19感染症が終息することが望まれます。 「臨床薬理の進歩 No.42」には2017年度および2018年度に採択された研究課題に関する論文がそれぞれ1編および19編、および海外留学助成金報告1編が掲載されています。いずれの研究課題も最先端のものが多く、将来、新しい治療法の確立に貢献することが期待されます。 ところで、我々が住んでいる温帯アジアでは、地球温暖化が進むにつれて動物媒介性感染症のリスクが高まる可能性があります[気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告]。特に、蚊を媒介する感染症(日本脳炎、マラリア、デング熱)やダニ媒介性脳炎が流行することが懸念されています。さらに、COVID-19のような新たなウイルス感染症が出現し、社会を混乱に陥れることも考えられます。このような環境の変化に対して速やかに対応するために、社会全体として日頃から備える必要があります。我々は、臨床薬理学を通じて人々の健康向上に寄与することを使命としており、感染症を大きな研究テーマの一つに位置付ける時期に来ているものと思います。2021年4月藤村 昭夫180あ と が き

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