臨床薬理の進歩 No.42
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*1 KANDA MITSURO 名古屋大学大学院医学系研究科 消化器外科学*2 KODERA YASUHIRO        同   上神田 光郎*1  小寺 泰弘*2はじめに要   旨 胃癌は全世界で罹患数は4位、癌関連死亡数は3位であり、特に胃癌罹患率の高い本邦において優先的に克服すべき重要な疾患である1)。進行胃癌は依然として予後不良であり治療開発が求められているが、いまだ有効性を示す分子標的治療薬は少ない。現在は、増殖因子を標的とするtrastuzumabとramucirumab、免疫チェックポイント阻害薬nivolumabしか使用できないことと、これらが限られた奏効率を示すのみであることが多くの化学療法不応例を生じている要因である2,3)。全く別の機序から胃癌細胞を制御しうる阻害薬の創製が、さらなる治療成績改善のために必須である。 胃癌は局所にとどまる段階であれば、内視鏡的もしくは外科的に切除することによって治癒可能 胃癌は依然として罹患率が高く、多様性の大きいこの疾患の治療成績を改善するには、病態解明と新規分子標的 治療薬の開発が望まれる。胃癌転移の分子生物学的機序解明のために実施した網羅的遺伝子発現解析から転移能の高い胃癌組織で発現亢進するレセプター分子としてアセチルコリン受容体サブユニットであるcholinergic receptor nicotinic beta 2 subunit (CHRNB2)を発見した。本研究では、ゲノム編集技術を応用した安定的ノックアウトによりCHRNB2の胃癌細胞悪性形質への関与を調べた。ポリクローナル抗体でのスクリーニングを経て取得した抗CHRNB2モノクローナル抗体は、in vitroおよびin vivoで胃癌細胞増殖抑制活性を示し、有望な新規胃癌分子標的治療として有望であると考えられた。組織中CHRNB2蛋白検出は、同抗体のコンパニオン診断技術として期待される。である。しかし、ひとたび遠隔転移や再発をきたした場合は、きわめて予後不良である4)。我々は本研究の準備として、転移・再発を生じた胃癌組織に特異的に高発現している分子を検出すべく、遠隔転移再発(腹膜播種、肝転移、リンパ節転移)をきたした群と切除後長期無再発群の間で、次世代シーケンサー(HiSeq、Illumina社)を用いたTranscriptome解析を行った5)。57,749分子の網羅的発現比較を行った結果、遠隔転移再発を起こした胃癌組織中に有意な発現増加を認めるレセプター分子として、アセチルコリン受容体サブユニットのひとつであるCholinergic Receptor Nicotinic Beta 2 Subunit (CHRNB2)を検出した。 本研究では、CHRNB2胃癌細胞における発現と機能を調べるとともに、同レセプターを標的とした特異的抗体を合成し、その胃癌細胞増殖抑制効Key words:胃癌、分子標的治療、アセチルコリン受容体サブユニット、抗体医薬、腹膜播種Development of monoclonal antibodies targeting CHRNB2 to treat gastric cancer20アセチルコリン受容体サブユニットを標的とした新しい胃癌抗体医薬の開発研究

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