臨床薬理の進歩 No.42
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方  法果について評価することを目的とした。研究の倫理性 本研究の基礎データには患者由来の組織を対象とした解析が含まれているが、臨床検体の研究使用に関しては、名古屋大学医学部生命倫理委員会の承認(試験番号2014-0043)のもと十分な説明を行い、患者側より文書による検体の研究使用に関する同意を得ている。患者由来試料の扱い方については、個人情報保護法の下で手引書を作成して徹底した管理を実施する。患者試料は連結可能な匿名化を図り、外部から隔離された研究室内に設置された−80 ℃冷凍庫に保存する。サンプルには連結可能な匿名記号のみを記載している。 動物実験の実施については、別に実施計画を申請し、名古屋大学規定の倫理審査を経て承認されている(承認番号 29329)。CHRNB2の発現調節と胃癌細胞機能の変化 胃癌転移の分子生物学的機序を紐解く意義と、CHRNB2を阻害する抗体医薬の薬効メカニズムを解明する意義から、CHRNB2の発現調節によってどのように胃癌細胞の悪性形質が変化するかを調査した。CRISPR-CAS9システムを用いたゲノム編集による安定的CHRNB2ノックアウトヒト胃癌細胞株を樹立した。このノックアウト癌細胞株と親株の間で、細胞増殖能(WST-8 assay)、遊走能(wound healing assay)、浸潤能(Matrigel invasion assay)、接着能(cell adhesion assay)を比較解析した。増殖能制御機構についてさらに詳細に検討するため、Annexin V染色によるアポトーシス細胞比率、ミトコンドリア膜電位を比較した。 In vivo実験として、ノックアウト癌細胞株と親株のそれぞれを用いたマウス皮下腫瘍モデルを作製し、造腫瘍能を比較した。CHRNB2の組織中発現解析 300例の胃癌症例から得た組織検体(正常胃粘膜と胃癌原発巣のペア)を対象に定量的PCR法でCHRNB2 mRNA発現量を評価した。さらに、免疫組織化学染色法で組織中CHRNB2蛋白発現量を解析した。外部検証データとして公開データベース(Kaplan Mayer Plotter、 http://kmplot.com/analysis/index.php?p=service&cancer=gastric)を用いた6)。抗CHRNB2ポリクローナル抗体の合成 抗原性・親水性・二次構造からエピトープ予測を行い、有望部位3ヶ所を選定した。ウサギへのペプチド免疫法により、抗CHRNB2ポリクローナル抗体を3種類合成した。In vitroでの胃癌細胞増殖抑制効果をWST-8 assayで評価した。In vivo実験として、マウス腹膜播種モデルを作成し、ポリクローナル抗体を週2回、4週間腹腔内投与して有害反応の有無と腹膜播種形成状態を調査した。モノクローナル抗体の合成 ポリクローナル抗体のデータに基づき、最有望抗原部位を選定した。マウスへのペプチド免疫法により抗CHRNB2モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを3クローン合成した。In vitroでの胃癌細胞増殖抑制効果をWST-8 assayで評価し、ハイブリドーマを選別した。モノクローナル抗体の薬効 CHRNB2発現量や分化度の異なる8種の胃癌細胞株を用いて、抗CHRNB2モノクローナル抗体のin vitroでの胃癌細胞増殖抑制効果をWST-8 assayで調べた。In vivo実験として、マウス腹膜播種モデルに対して抗CHRNB2モノクローナル抗体を週2回、4週間腹腔内投与して有害反応の有無と腹膜播種形成状態を調査した。CHRNB2の局在解析と内在化 CHRNB2発現胃癌細胞株MKN1を対象に、標識CHRNB2、細胞骨格としてのActin、核をDAPI21

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