臨床薬理の進歩 No.42
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結  論謝  辞利益相反アウトにより、さまざまな胃癌細胞機能にCHRNB2が関与していることが示された。特に、胃癌の予後を規定する癌細胞転移を促進する機能である遊走能、浸潤能への関与は重要であると考えている7)。CHRNB2を抑制することで、癌細胞の転移が抑制できれば治癒切除術後の再発も予防できる可能性がある。 分子標的治療薬の開発と同時に、対象患者選別のためのコンパニオン診断技術が開発できれば個別化医療の実現において非常に意義深い。CHRNB2発現度は予後に相関しており、組織中発現度を評価することでハイリスク症例が選別可能である。さらに、技術的汎用性の高い免疫組織化学染色法で組織中CHRNB2蛋白が評価可能であり、診断時の内視鏡検査採取検体もしくは手術標本から組織を得て、胃癌原発巣組織中CHRNB2蛋白発現を調べることで抗CHRNB2治療の対象患者が選別できる可能性が示された。さらなる検査抗体キットの最適化が望まれる。 ポリクローナル抗体でのスクリーニングを経て、in vitro、in vivoのいずれでも胃癌細胞増殖抑制活性を有する抗CHRNB2モノクローナル抗体を取得した。同抗体は分化度やCHRNB2発現量の異なる胃癌細胞8種のうち、6種で増殖阻害効果を示しており、多様性の強い胃癌症例に幅広く効果が期待される。抗CHRNB2モノクローナル抗体はADCC活性を示さず、アンタゴニストとして作用しているものと考えられた。抗体付加によってCHRNB2は内在化を示しており、抗体−薬物複合体によるnakedのモノクローナル抗体からのさらなる薬効増強が期待される。現在、本研究の成果を発展させ、名古屋大学大学院創薬科学研究科 創薬有機化学講座との共同研究により抗体−薬物複合体開発研究を実施している。 The Cancer Genome Atlas(TCGA)の公開データから、CHRNB2は急性骨髄性白血病、乳癌、神経膠腫、肺癌、悪性黒色腫、膵癌、褐色細胞腫において一定頻度の高発現症例を認めており、将来的にはCHRNB2に対する抗体医薬は胃癌以外の癌腫にも対象を拡大しうるものと考えている。 アセチルコリン受容体サブユニットであるCHRNB2は胃癌細胞の悪性形質に関与しており、これをブロックする抗体医薬による治療コンセプトは有望であると考えられた。 本研究を遂行するにあたり、助成いただいた臨床薬理研究振興財団に深く感謝を申し上げます。 本研究に関し、開示すべき利益相反はありません。27

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