考 察謝 辞6.9 mm × 5.9 mmとなった。シスプラチン静注群は治療前CTで腫瘍径6.2 mm × 5.3 mmで、治療後4週間経過した時点でのCTで腫瘍径8.9 mm × 7.3 mmとなった。 現在、実験は途中の段階である。現時点までの成果について考察する。患者由来腫瘍の生着確認実験を行った。生着については、患者から手術によって摘出した腫瘍を直接移植するのでなく、一旦凍結保存という過程を経て、移植を行った。理想的には、摘出直後の新鮮腫瘍をすぐに移植することである。しかし、摘出直後にすぐに移植を行う人員の不足や、ラットの準備が手術日に合わせることは困難であった。そのような障害が生じることは事前に予想できていたため、凍結保存腫瘍での生着を試みた。凍結保存をすることで、腫瘍のラット内での生着率が落ちたと考える。しかし、生着率が低いが、一時凍結保存腫瘍の生着は可能であることがわかった。新鮮腫瘍の移植は、人件費などの労力がかさむため、非効率的である。その点、凍結保存腫瘍での移植腫瘍生着の成功は極めて意義が大きい。 腫瘍生着できた2症例において、経カテーテル図1 ラット肝臓腫瘍のCT画像と摘出標本写真Tumor: 肝臓内に移植した腫瘍(矢印)、Liver: ラット内肝臓。的に肝動注療法を行った。生着腫瘍の数に限りがあったため、各1匹ずつコントロール群とシスプラチン肝動注群とシスプラチン静注群の割り付けで抗癌剤効果判定を行った。2症例ともにコントロール群よりシスプラチン肝動注群で腫瘍増大の抑制効果が見られた。しかし、2症例ともにPDXラットの数に限りがあるため、統計学的な検討はできていない。また、他の抗癌剤では、さらなる腫瘍縮小効果が得られたかもしれない。その点では、さらなる検討が必要である。しかし、PDXモデル上で抗癌剤効果判定を行えた点では極めて意義が大きいと考える。ラットが代替となり、抗癌剤効果判定試験を実施できることは、オーダーメイド治療を推進する役割となる。抗癌剤効果判定の精度を高めるためには、患者の腫瘍から多数のPDXラットを用意して、判定試験を行うほうが良いと考える。 以上、実験途中での報告であるが、引き続き実験を継続し、患者由来腫瘍を用いての抗癌剤効果判定を実施し、オーダーメイド治療の確立を図っていく。 本研究を遂行するにあたり研究助成を頂きました臨床薬理研究振興財団に感謝申し上げます。32
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