臨床薬理の進歩 No.42
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008(11%)777505(14%)1(5%)02(15%)05(16%)1(8%)02(13%)2372031333214121401(3%)7(24%)0930297345Not known方  法表1 前立腺癌臨床検体でFISHを施行した97例の症例背景Positive for Loss of KDM5D(%)VariablesNormal prostateAdjacent normal prostateAdenocarcinomaTumor GradingT1T2T3T4Not knownStageⅠⅡⅢⅣNot knownGleason Grade結  果Number of cases有意に低下していること、また発現レベル低下群ではより全生存率等の予後が悪いことを明らかにしている。KDM5DはY染色体上にcodingされる男性特異的脱メチル化酵素であり、H3K4me3、me2を脱メチル化する2)。次世代シーケンスでの網羅的解析がさかんにおこなわれているが、実はY染色体上の遺伝子のコピー数変化等については、あまり解析が進んでいない。本研究は、KDM5D欠失による前立腺がんの形質変化の分子生物学的特徴とそこからの新規治療への発展を目的に施行された。統計解析 2群間の比較では、正規分布をKolmogorov–Smirnovテストで判定したうえで、正規分布に対してStudent’s t、ANOVAテスト、非正規分布に対してWilcoxon、Kruskal–Wallisテストをおこなった。分布比較ではchi-squareテストをおこなった。倫理的及び利益相反に関する配慮 本学における研究は、ヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理的原則)の理念に基づいておこなわれた。「臨床研究に関する倫理指針」、「疫学研究に関する倫理指針」、「遺伝子治療等臨床研究に関する指針」、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」及び「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」に則りおこなわれ、必要に応じ研究倫理委員会にて、その倫理性や科学的妥当性が審査されるように配慮した。利益相反ポリシーに関して、研究実施者及び関係者の利益相反を適切にマネジメントし、社会的信頼を失うことのないよう研究の適正な推進を図ることを目指しており、開示に係る必要事項は、利益相反管理委員会を設けて審議をおこなった。本研究は、「大阪医科大学附属病院受診者を対象とした悪性腫瘍克服に対する研究基盤バイオバンクの構築:承認No.2305」、「大阪医科大学バイオバンク検体を用いたがんの再発・予後に関する新規バイオマーカーの探索と新規治療法の開発:承認No.2344」のIRBでの承認のうえ施行した。 前立腺がんにおけるKDM5Dの発現レベルの低下について、Y染色体上の同部位の欠失がみられるかを解析するために、Fluorescence In Situ Hybridization(FISH)をおこなった。ヒト前立腺がんホルモン感受性細胞株であるLNCaPと、それより派生するCRPCの形質を獲得したLNCaP-104R2の2つの細胞株を用いてFISH解析をおこなうと、LNCaP細胞では2コピーのKDM5D locusを持っているのに対し、LNCaP-104R2細胞では99%以上のpopulationで完全に同部位を欠失していることが明らかとなった。また、LNCaP細胞では0.5%のpopulationでKDM5Dを完全に欠失していることが明らかとなり、ホルモン療法などの治療ストレスによる特定のpopulationセレクションが起こることによりCRPCへの形質変化がみられることがある可能性が示唆された。35

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