*1 TAKIGUCHI SHINICHIRO 福井大学医学部附属病院 子どものこころ診療部*2 MAKITA KAI *3 FUJISAWA TAKASHI *4 NISHITANI SHOTA *5 SHIMADA KOJI *6 KOSAKA HIROTAKA *7 TOMODA AKEMI はじめに要 旨 反応性愛着障害(reactive attachment disorder:RAD)は、児童虐待・ネグレクトなどの不適切な養育によって幼児期に養育者との安定した情緒的な愛着形成が阻害されることで発症する。RADの子どもは苦痛時に慰めを求めず、なだめ・励ましに応じにくい、人を信頼できないなど愛着行動および社会的コミュニケーションの障害により、周囲とより良い人間関係を築けず、焦燥・悲嘆・恐怖と福井大学子どものこころの発達研究センター 発達支援研究部門 同 上 同 上 同 上福井大学医学系部門病態制御医学講座 精神医学福井大学医学部附属病院 子どものこころ診療部、福井大学子どものこころの発達研究センター 発達支援研究部門いった感情調整不全を伴う(米国精神医学会 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版:DSM-51))。RADの有病率は約1%と報告されている2)が、小児期から成人期にかけて様々な併存症・重篤な精神疾患への推移が高頻度で起こり、虐待の世代間連鎖も生じるため病態解明・治療の必要性は極めて高い。 RADへの心理的介入治療として、子どもと養育者の間の肯定的な相互作用によって両者の愛着を育むことが最も重要だが、RADの子どもは養育者にKey words:反応性愛着障害、オキシトシン点鼻、報酬系、fMRI、ランダム化二重盲検比較試験Oxytocin effects on neural reward processing in children and adolescents with reactive attachment disorder: a randomized controlled trial 反応性愛着障害(RAD)は愛着行動・社会性・情動の障害を症状とし、報酬系の脳賦活低下と関連している。RADは既存の心理療法での治療が困難なため、薬理学的介入の確立が必要である。オキシトシン(OT)点鼻投与は他者への信頼を高め、報酬関連機能を促進することが報告されている。本研究では、RAD男児24名(10~18歳)と定型発達男児27名(TD)(10~17歳)を対象に、金銭報酬課題による機能的MRIを用いて、OT点鼻(24単位)単回投与のランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験を実施した。その結果、RAD群ではOT点鼻投与時の動機づけスコアが有意に増加し、右中前頭回の賦活と右中心前回の賦活低下を認めた。より緩い閾値での追加解析ではOT点鼻により両側尾状核の賦活がみられ、その効果はRADの内在化問題の重症度と正の相関を示した。OT点鼻投与は、RADの報酬系回路の活動を高め、報酬に関連した動機づけや行動を促進する可能性を示唆した。滝口 慎一郎*1 牧田 快*2 藤澤 隆史*3 西谷 正太*4 島田 浩二*5 小坂 浩隆*6 友田 明美*754児童青年期の反応性愛着障害におけるオキシトシン点鼻投与の効果−ランダム化二重盲検比較試験−
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