結 果統計解析 被験者の臨床背景の2群間比較の検定には、連続変数はWelch’s t-testまたはMann–Whitney U test、カテゴリ−変数はχ2 testを用いた。動機づけスコアの比較の検定には、2元配置分散分析、Bonferroni法を用いた。統計解析はSPSS ver. 24 (IBM、Armonk、NY、USA)を使用し、p < 0.05を統計学的有意水準とした。脳画像解析では、MATLAB上でSPM12を用いてボクセルごとのt検定および線形回帰を求めて解析した。TD群とRAD群の脳活動を比較し、両条件で別々にOT投与の主効果を同定するために被験者内分散分析(ANOVA)を実施した。 被験者の臨床背景を表1に示した。RAD群はTD群に比べて、IQの有意な低下、SDQの総合的困難さおよび内在化・外在化問題行動スコアの有意な上昇がみられ、情動・行動症状が重度であることが示唆された。また、本研究においてOT・プラセボ単回点鼻投与による有害事象は軽度の眠気のみで、バイタルサイン異常も認められなかった。図2 定型発達(TD)群と反応性愛着障害(RAD)群における、オキシトシン(OT)およびプラセボ(PLC)点鼻投与時の報酬課題と無報酬課題時の動機づけスコア表示は平均値±標準誤差。2元配置分散分析、Bonferroni法を用いて検定。*p < 0.05 ; ns、有意差なし。児童青年期の反応性愛着障害におけるオキシトシン点鼻投与の効果−ランダム化二重盲検比較試験−動機づけスコア 報酬課題時の動機づけスコアにおいて被験者群(TD、RAD)と投薬(OT、プラセボ)の影響を調べるため2元配置分散分析を行ったところ、有意な交互作用が認められた[F(1, 49) = 4.558、p = 0.038]。単純主効果の検定では、OT点鼻投与時にはRAD群で動機づけスコアが有意に増加し(F(1, 49) = 6.082、p = 0.017)、TD群と同程度まで上昇した(F(1, 98)< 0.001、p = 0.987)が、TD群ではOT点鼻投与による有意な変化はなかった(F(1, 49) = 0.306、p = 0.583)(図2)。脳画像解析結果 全脳解析において、RAD群ではOT点鼻投与時にプラセボ投与時と比較して、金銭報酬条件で右中前頭回(ブロードマン10野)の賦活が有意に増加した(MNI座標、x = 34、y = 56、z = 6;クラスターサイズ = 282、クラスターレベルでのFamily-wise-error(FWE)補正p = 0.042:図3a)。また、RAD群ではOT点鼻投与時にプラセボ投与時と比較して、金銭報酬条件で右中心前回(ブロードマン6野)の賦活が有意に低下した(MNI座標、x = 40、y = −14、z = 64;クラスターサイズ = 934、クラスターレベルでのFWE補正p < 0.001:図3b)。57
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