スタチン系薬剤の影響(A)シンバスタチンがん細胞移植からの日数(C)ロスバスタチンがん細胞移植からの日数(B)アトルバスタチンがん細胞移植からの日数チン(1および10 μM)、アトルバスタチン(10 μM)およびロスバスタチン(10 μM)併用により、オキサリプラチン単独処置と比較して細胞生存率が有意に上昇した(図4)。Gstm1遺伝子ノックダウンにより、GSTM1タンパク質発現が50%程度になった(図5(A))状態において、各オキサリプラチン濃度でPC12細胞の生存率は有意に低下した(図5(B))。Gstm1をノックダウンしたPC12細胞では、スタチン系薬剤は細胞生存率を改善しなかった(図5(C))。5. オキサリプラチンの抗がん作用に対する 担がんモデルマウス実験では、移植15日目のオキサリプラチン群の腫瘍体積はコントロール群よりも有意に小さかった。同じ時点で、シンバスタチン併用群とアトルバスタチン併用群の腫瘍体積は、オキサリプラチン群と同等であり、コントロール群よりも有意に小さくなっていた。また、ロスバスタチン併用群の腫瘍体積は、コントロール群、オキサリプラチン群に比べて有意に小さかった(図6)。図6 オキサリプラチンの抗がん作用に対するスタチン系薬剤の影響(A)シンバスタチン、(B)アトルバスタチン、(C)ロスバスタチン併用のオキサリプラチンの抗がん作用に与える影響。データは、平均±標準誤差で表す(N = 8)。一元配置分散分析の後、Tukey’s testにより検定を行った。**p < 0.01 vs. コントロール、††p < 0.01 vs. オキサリプラチン。6. 後方視的カルテ調査 2009年4月から2018年3月までに391例の患者がオキサリプラチンを使用していた。このうち、過去にオキサリプラチンの投与を受けたことのある患者10例、末梢神経障害の既往歴のある患者15例、臨床試験参加者43例、1サイクル以内に治療を中止した患者101例の計154例を除外した残りの237例を分析した。スタチン系薬剤を使用していない患者は216例、スタチン系薬剤を使用している患者は21例であった。年齢、性別、がんの種類、体格指数、体表面積、検査値、併用薬については、両群間で有意差はなかった(表5)。末梢神経障害の発症率は、スタチン系薬剤非併用群88.4%に対してスタチン系薬剤併用群71.4%であり、スタチン系薬剤併用群では末梢神経障害の発症率が有意に低かった(表6)。さらに、スタチン系薬剤併用群ではスタチン系薬剤非併用群と比較して、オキサリプラチン累積投与量あたりの末梢神経障害発症率が有意に低かった(図7)。************80
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