方 法生存期間が延長する3)。また、NPCではスフィンゴミエリン(sphingomyelin; SM)も蓄積しており、このSMレベルの上昇が遊離型コレステロールの蓄積を誘導するというモデルも提唱されている。SM分解酵素の1つである酸性スフィンゴミエリナーゼをNPC細胞に添加すると、SMレベルが減少し、遊離型コレステロールの蓄積が軽減されることが示されている4)。また、私達の研究グループは、SM合成に関与するセラミド輸送蛋白質CERTの阻害剤HPA-12が、NPC細胞においてSMレベルを減少させ、遊離型コレステロールの蓄積を軽減することを報告した5)。このように、スフィンゴ脂質代謝の異常が、遊離型コレステロールの2次的な蓄積を誘導する可能性が示唆されている。 本研究では、NPCにおける遊離型コレステロールの蓄積とスフィンゴ脂質代謝異常との関連性について解析を行った。その結果、NPC1を欠損した細胞やマウスにおいて、セラミド-1-リン酸(ceramide-1-phosphate; C1P)のレベルが正常対照群に比べて高いことが明らかになった。C1Pはセラミドがセラミドキナーゼ(ceramide kinase; CerK)によりリン酸化されて生成される。本研究では、NPC細胞のCerKを阻害すると遊離型コレステロールの細胞内輸送異常が改善すること、さらに、NPC1-/-マウスのCerKを遺伝的に欠損させるとマウスの生存期間が延長することが明らかになった。従って、CerKの阻害はNPCに対する新たな治療戦略になることが明らかになった。細胞と細胞培養 CHO細胞に由来するNPC1欠損細胞株A101(NPC1-/-)および、その親株JP17(WT)は以前に鳥取大学医学部において樹立された6)。NPC患者に由来する皮膚線維芽細胞GM03123(NPC1*)および健康成人に由来する皮膚線維芽細胞GM00038(Normal)はCoriell Institueから購入した。NPC1*細胞はNPC1蛋白質に2つの変異を有している(P237S, I1061T)。CHO細胞は10% FBSを含むHam’s F-12 mediumで、皮膚線維芽細胞は15% FBSを含むMEMで培養した。マウス NPC1-/-マウス(BALB/cNctr-Npc1m1N/J、Jackson Laboratory、stock no. 003092)は道川誠先生(名古屋市立大学)からご供与いただいた。C57BL/6 CerK-/-マウスは五十嵐靖之先生(北海道大学)からご供与いただいた。NPC1+/-マウスとCerK+/-マウスを交配させ、NPC1+/+CerK+/+(WT)、NPC1+/+CerK-/-(CerK-/-)、NPC1-/-CerK+/+(NPC1-/-)、NPC1-/-CerK-/-(DKO)マウスを得た。マウスを用いた実験は千葉大学動物実験委員会の承認を得て実施した。ヒト血漿サンプル 健康成人(男性7人、女性8人)およびNPC患者(男性2人、女性2人)の血液から血漿サンプルを作製した。ヒト血漿サンプルを用いた研究は千葉大学および鳥取大学の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号: 鳥取大学17A110、千葉大学248-3)。iPS細胞の作製とニューロンへの分化 NPC患者に由来する皮膚線維芽細胞(GM03123、NPC1*)にOct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycを遺伝子導入してiPS細胞を樹立した。健康成人に由来するiPS細胞は山中伸弥先生(京都大学)が樹立した201B7株を用いた。また、赤松らが報告した高効率な神経分化誘導法7)を用いて、iPS細胞をニューロンに分化誘導した。フィリピン染色 細胞は4% paraformaldehyde(PFA)で固定した。マウス脳は4% PFAで固定し、30%スクロースで2日間インキュベート、OCTコンパウンドで包埋し、クライオスタットを用いて30μmの切片を作製した。細胞と切片は100μg/mLフィリピンで2時間染色し、共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss LSM780)にて87
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