臨床薬理の進歩 No.43
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できることを確認した(図2B)。この条件で培養したNPC1-/-細胞においては、BODIPY-Cerの局在はゴルジ体であり、異常な局在は改善されていた。さらに、LPDSでの培養は、NPC1-/-細胞におけるBODIPY-C1Pの産生亢進を抑制した(図2C)。これらの結果から、NPC細胞では遊離型コレステロールの蓄積に起因したセラミドの細胞内局在の異常によりC1Pの産生が亢進することが示唆された。NPCにおける細胞内コレステロール蓄積とC1Pの関連性 NPCにおける細胞内コレステロール蓄積とC1Pの関連性について検討した。NPC1-/-細胞においてCerK阻害剤のNVP-231を処理すると、遊離型コレステロールの蓄積が軽減されることをフィリピン染色およびコレステロール量の測定により確認することができた(図3A-C)。また、NPC1*細胞においても同様に、NVP-231は遊離型コレステロールの蓄積を軽減した(図3D、E)。次に、NPC1*細胞のCerKをsiRNAによりノックダウンすることを試みた。CerKに対するsiRNAをNPC1*細胞および正常対照細胞にトランスフェクションし、48時間培養することで、CerKのmRNA量およびC1Pの産生が抑制されることを確認した(図3F)。この時の遊離型コレステロールをフィピリンにより観察したところ、NPC1*細胞における遊離型コレステロールの蓄積がCerKのノックダウンにより軽減されることが示された(図3G、H)。 NPC1を発現しないNPC1-/-細胞においてもCerKの阻害が遊離型コレステロールの蓄積を軽減したことから、CerKを阻害することにより、NPC1に依存しないコレステロール輸送が改善される可能性を考えた。NPC細胞ではNPC1の欠損に加えて、後期エンドソームからゴルジ体への小胞輸送の異常によりコレステロールが後期エンドソーム/リソソームに蓄積することが知られている。そこで、CerKの阻害が小胞輸送を改善させる可能性を検証した。後期エンドソームからゴルジ体への小胞輸送は低分子量G蛋白質のRab9が調節することが知られている。NPC1-/-細胞にGFP-Rab9を一過性発現させたところ、遊離型コレステロールの蓄積が軽減されたが、C1Pを細胞に添加すると、GFP-Rab9が発現している細胞においても遊離型コレステロールの蓄積が観察された(図3I)。また、NPC1-/-細胞にRab9の恒常活性化型変異体(GFP-Rab9Q66A)を一過性発現させたところ、C1Pを細胞に添加しても遊離型コレステロールの蓄積が軽減された(図3I)。次に、NPC1-/-細胞にRab9の恒常不活性型変異体(GFP-Rab9S21N)を一過性発現させたところ、NVP-231を処理しても遊離型コレステロールの蓄積が軽減されなかった(図3J)。これらの結果から、NPC1-/-細胞ではC1Pが後期エンドソームからゴルジ体への小胞輸送を阻害することによって、遊離型コレステロールの蓄積を促進することが示唆された。疾患特異的iPS細胞を活用した解析 健康成人およびNCP患者に由来する皮膚線維芽細胞からiPS細胞を樹立した。図4Aに示すように、iPS細胞をニューロンに分化させ、フィリピン染色を行った。その結果、NPC患者に由来するニューロンにおいては、健康成人に由来するニューロンに比べて遊離型コレステロールが蓄積している様子が観察され、この遊離型コレステロールの蓄積はNVP-231の処理により軽減された(図4B、C)。次に、iPS細胞に由来するニューロスフェアの数を継代の際に測定したところ、健康成人に由来するニューロスフェアの数は継代ごとに増加したが、NPC患者に由来するニューロスフェアの数は減少した(図4D)。また、1回目の継代時からNVP-231を処理すると、2回目の継代時におけるNPCニューロスフェアの減少が改善される傾向が示された(図4E)。これらの結果から、NPC患者においてCerKはニューロンにおける遊離型コレステロールの蓄積およびニューロンへの分化異常を誘発する可能性が示唆された。91

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