結 論謝 辞利益相反本研究において、NPC1-/-マウスのCerKを遺伝的に欠損させると、IL-1βおよびIL-6のmRNAレベルが減少すること(data not shown)、また、グリア細胞の活性化が抑制されることが明らかになった(図5E)。従って、NPC1-/-マウスではC1Pの産生亢進による2次的な遊離型コレステロールの蓄積によりグリア細胞が活性化し、プルキンエ細胞の脱落を誘発すると考えられる。 ミグルスタットはスフィンゴ糖脂質の蓄積を軽減することで神経脱落を抑制するが、遊離型コレステロールの蓄積を軽減することはできない。シクロデキストリンは遊離型コレステロールと複合体を形成し、コレステロールの輸送担体として機能すると考えられている。これまでに、NPC1-/-マウスにおいて、シクロデキストリンの投与が遊離型コレステロールの蓄積を軽減し、治療効果を示すことが報告されている13)。さらに、シクロデキストリンとミグルスタットの併用がさらなる治療効果を示すことが報告されている14)。本研究において、NPC1-/-マウスのCerKを遺伝的に欠損させ、さらにミグルスタットを投与することにより、生存期間が顕著に延長することが示された(図5H)。従って、遊離型コレステロールの蓄積を軽減するCerKの阻害と、ミグルスタットの併用はNPCの治療に有効であると考えられる。 本研究では、NPC1-/-細胞のCerKを阻害すると、Rab9依存性の小胞輸送異常が改善され、遊離型コレステロールの蓄積が軽減することを明らかにした。Rab9は活性型のGTP結合型と、不活性型のGDP結合型が存在する。C1PがRab9の発現量やGTP/GDP比を調節する可能性があるが、詳細は不明である。今後、その詳細を明らかにすることで、CerK/C1Pが細胞内コレステロール輸送を調節するメカニズムが明らかになるであろう。 本研究により、CerK/C1PがNPCの発症に関与すること、CerKの阻害がNPCの治療標的となることが明らかになった。現在は、新規CerK阻害薬の開発を目指した研究を進めており、約20万種類の化合物ライブラリーからCerKに対して阻害活性を有する約50種類のヒット化合物を得ることに成功している。今後、さらにヒット化合物を絞り込み、構造最適化、非臨床試験を実施し、将来的には臨床試験に進めたいと考えている。 本研究を遂行するにあたり、研究助成を賜りました公益財団法人臨床薬理研究振興財団に心より感謝申し上げます。また、CerK-/-マウスをご供与いただきました五十嵐靖之先生(北海道大学)およびNPC1-/-マウスをご供与いただきました道川誠先生(名古屋市立大学)に厚く御礼申し上げます。 本研究に関して開示すべき利益相反はありません。96
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