*1 TADA HAYATO *2 NOMURA AKIHIRO *3 SATO TAKEHIRO *4 HOSOMICHI KAZUYOSHI 同 上*5 NOMURA SEITARO *6 ITO KAORU 多田 隼人*1 野村 章洋*2 佐藤 丈寛*3 細道 一善*4 野村 征太郎*5 伊藤 薫*6はじめに要 旨 冠動脈疾患は遺伝しうる疾患であり、その発症予測やリスク層別化にヒトゲノム情報が有用であろうという発想自体は極めて自然である。一方で、いわゆる次世代シーケンサーの登場による網羅的遺伝子解析技術の進歩により、希少変異のみならず、高頻度遺伝子多型(Single Nucleotide Variant:SNV)などを網羅的に比較的短期間に解析可能となった。このような希少変異、SNVの情報は冠動脈疾患の発症メカニズムを考慮するうえで重要であるとともに、個人の遺伝子型を調べることで冠動脈疾患発症予測に繋がるのではないかといった個別化医療への応用が期待されるに至っている。このような背景の元、申請者らは、欧米人のゲノムワイド関連解析(genome-wide association study:金沢大学附属病院 循環器内科金沢大学附属病院 先端医療開発センター金沢大学 医薬保健研究域医学系 革新ゲノム情報学分野東京大学附属病院 循環器内科理化学研究所生命医科学研究センター 循環器ゲノミクス・インフォマティクス研究チームGWAS)により、心血管疾患との関連が示唆されている複数の遺伝子座の SNV の情報を組み合わせて解析する、遺伝子リスクスコア(Polygenic Risk Score:PRS)の有用性を世界に先駆けて報告してきた1,2)。一方で、申請者留学先研究室のSekar Kathiresan博士らは近年、本概念をさらに発展させSNPアレイ全体(>600 万 SNP)の情報を加味することで、その予測能は冠動脈疾患におけるいわゆる古典的危険因子(高血圧症や糖尿病、喫煙など)を遥かに凌駕するものであることを示した3)。このようなPRSは、高血圧や糖尿病、喫煙などの後天的危険因子の発症する前から測定可能であり、かつ定量的に評価できることから、冠動脈疾患における個別化医療の実践に極めて有用である可能性が高い。一方で冠動脈疾患の最重要なサロゲートマーカーであるLDLコレステロールについて、Key words:心血管疾患遺伝子リスクスコア、個別化医療、家族性高コレステロール血症、LDLコレステロール、動脈硬化 本研究において、遺伝性動脈硬化性疾患の極端な例としての家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia:FH)および地域住民ゲノムコホートである金沢大学志賀町コホートを用いて、FHを引き起こすいわゆるFH変異(希少有害変異)と高頻度遺伝子多型によるリスクがLDLコレステロールおよび冠動脈疾患に与える影響を検討した。FH変異はLDLコレステロールおよび冠動脈疾患に大きな影響を与えることが示された。高頻度遺伝子多型の重積によるpolygenic risk score for LDL cholesterol (PRSLDL-C)は両群に対してわずかに影響を与えてはいたものの、いわゆる多因子FHを引き起こすほどの大きな影響量は確認されなかった。Validation of polygenic familial hypercholesterolemia116高頻度遺伝子多型重積による多因子家族性高コレステロール血症の検証
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