対象と方法PRSの蓄積に伴う家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia: FH)の存在が示唆されるようになり冠動脈疾患全体への寄与が大きいことが予想される。今回の研究は、PRSがLDLコレステロールへ与える影響を明確とすることを目的とし、このようなPRSが、いわゆるFHという希少有害変異に伴う単一遺伝子疾患と考えられている疾患そのものおよび冠動脈疾患に対して一定の寄与を与えているという仮説を検証するべく、臨床診断FHの症例のコホート及び地域住民ゲノムコホートである金沢大学志賀町コホートを用いて、研究を遂行した。 金沢大学における、FHレジストリーおよび金沢大学志賀町コホート(Shikamachi Health Improvement Practice(SHIP)より1,287例に対して日本人ゲノム解析ツール「ジャポニカアレイ®」約67.5万箇所のSNPをジェノタイピングしたうえで、HapMapプロジェクト日本人リファレンスゲノム配列を参照し、全ゲノム構造を疑似的に再構成(インピュテーション)を行った。64例で血清脂質値の欠損があったため、結果として1,223例を解析対象とした。現時点では冠動脈疾患の新規発症症例数が想定よりも少数であり解析不可能であったため、冠動脈疾患に寄与する最大かつ確実なサロゲートマーカーとして LDLコレステロールに注目した。LDLコレステロール遺伝子スコア(polygenic risk score for LDL-C [PRSLDL-C])を各個人において算出し、FH病原性変異有りの群(monogenic FH 177例)、臨床的にはFHだがFH病原性変異無しの群(mutation-negative clinically diagnosed FH [CDFH] 199例)、志賀町コホート群(Control 847例)の3群とし、各群のPRSLDL-Cの分布および冠動脈疾患の有病率について比較検討した。FH遺伝子解析 日本動脈硬化学会の定めるFHの臨床診断基準4)を満たす症例群における末梢血白血球よりDNAを抽出し、KAPA DNAライブラリー調整キットで調整後、NimbleGen DNAキャプチャーライブラリーキット(Roche NimbleGen Inc、WI、USA)を用いて、FH遺伝子(LDL receptor [LDLR]、Apolipoprotein B [APOB]、proprotein convertase subtilisin/kexin type 9 [PCSK9]、LDL receptor adaptor protein 1 [LDLRAP1])のコーディング領域をキャプチャーし、イルミナ社Miseqシステムにより、シークエンス反応を行った。得られたFASTQファイルをGATK version 3ワークフローによりバリアントコーリングした。Variant Effect Predictor ver.82 およびdbNSFP software ver.2.9.1により変異アノテーションを行い、変異の頻度情報は、The Genome Aggregation Database(gnomAD)databaseを参照した5)。LDLRにおけるCopy number variations(CNV)をeXome Hidden Markov Model software(XHMM)モデルにより解析し、multiplex ligation-dependent probe amplification (MLPA) (FALCO Biosystems Ltd、Kyoto、Japan)により確認した。病原性遺伝子変異の判定は、1)変異の頻度(minor allele frequency [MAF] <0.1%)、2)機能喪失型変異、3)5つのin silico software(SIFT、Polyphen2-HDIV、Polyphen2-HVAR、MutationTaster-2、LRT)により全て病原性が示唆されたもの、4)ClinvarデータベースにてPathogenicもしくはlikely pathogenic、5)LDLRのCNVとし、最終的にはAmerican College of Medical Genetics(ACMG)クライテリアの病原性の判定も参考にした6)。SNVジェノタイピング イルミナ社Asian Screening Array-24 v1.0を用いてFH症例群に対して、ジャポニカアレイ®を用いて志賀町コホートに対してSNVのジェノタイピングを行った。ジェノタイピング後の解析は全てPLINK 1.90を用いて行った。ジェノタイピング後のクオリティコントロールとして、コール率98%117
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