するステートメントでは、IPを合併した小細胞肺癌に対する初回化学療法としては、キードラッグの1つであるイリノテカンが禁忌であることから、プラチナ製剤+エトポシド療法を第一選択として提示している5)。小細胞肺癌に対する血管新生阻害薬 小細胞肺癌細胞では、VEGFR-2やVEGFR-3、PDGFRが過剰発現しており、それが豊富な腫瘍血管新生や不良な予後に関連すると考えられている。これまで、ED小細胞肺癌を対象として、VEGFを標的とした抗体やマルチキナーゼ・インヒビターを用いた試験がいくつか行われてきた。抗VEGF抗体ベバシズマブは、シスプラチンないしカルボプラチン+エトポシドへの上乗せ効果を見るランダム化比較試験が過去に3つ報告されているが、SALUTE試験(第Ⅱ相試験)およびGOIRC-AIFA FARM6PMFJM試験(第Ⅲ相試験)ではベバシズマブの上乗せにより無増悪生存期間・奏効率は有意に改善したが6,7)、IFCT-0802試験(第Ⅱ/Ⅲ相試験)では上乗せの有効性を示すことができず8)、また、いずれの試験でも生存期間の延長効果は示せていない。スニチニブ、バンデダニブ、アフリベルセプトも、それぞれ細胞障害性抗癌剤への上乗せで有効性を示すことができなかった。ニンテダニブへの期待 ニンテダニブは、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)α、βおよび線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)1-3および血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)の各受容体において、ATP結合ポケットを占拠する低分子チロシンキナーゼ阻害剤である。血管新生阻害薬としては、既治療の進行非小細胞肺癌を対象としたLUME-Lung1試験でドセタキセルへの上乗せにより無増悪生存期間の有意な延長を認め、欧州では非小細胞肺癌の二次治療の薬剤として承認された。小細胞肺癌では、既治療例に対して、ニンテダニブ単剤の有効性・安全性を評価する目的で単群第Ⅱ相試験が行われ9)、主要評価項目である奏効率は5%と単剤での抗腫瘍効果は限定的だが、良好な認容性が示された。 ニンテダニブは、線維芽細胞の増殖・遊走および形質転換に関わるシグナル伝達を阻害する作用もあり、本邦ではIPFに対する抗線維化剤としてのみ承認されている。IPFの患者に対するニンテダニブ150 mg 1日2回、52週間投与の有効性・安全性を検証した第Ⅲ相国際共同試験であるINPULSIS試験では、ニンテダニブ群はプラセボ群に対して努力肺活量(FVC)の年間減少率の低下を有意に抑制した10)。また、52週間時点での中央判定で確認された急性増悪の発現率は、ニンテダニブ群1.9%、プラセボ群5.7%と、ニンテダニブ群ではプラセボ群と比較して有意に低下した(p=0.0010)。加えて同試験のサブ解析では、有害事象により減量を要した症例でも同等のFVC低下抑制効果が見られた。この結果、本邦では2015年7月にIPFへの効能・効果でニンテダニブ(用法・用量は150 mg×2/日、患者の状態により100 mg×2/日に減量する)の製造販売が承認された。また、本邦では、IPFを合併した進行非小細胞肺癌を対象としたカルボプラチン+アルブミン懸濁型パクリタキセル±ニンテダニブのランダム化第Ⅱ相試験(J-SONIC試験)が現在進行中である11)。試験実施の根拠 小細胞肺癌は緩和療法のみの場合は予後が著しく不良であり、IP合併における急性増悪のリスクを加味しても化学療法の重要性がより大きい。IP合併小細胞肺癌を対象とした唯一の前向きパイロット試験の結果を参考に、カルボプラチン+エトポシドが標準治療として用いられることが多い。しかし、背景のIPをIPFのみに限定すると、プラチナ製剤+エトポシドであっても24-27%と高率に急性増悪を発症する可能性がある。IPFを合併した小細胞肺癌を対象とした前向き試験はこれまで無く、急性増悪を惹起するリスクの低い有効な治療選択肢の確立が必須である。 IP合併例において、化学療法による腫瘍縮小33
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