「臨床薬理の進歩 2022 No.43」には、2019年度研究奨励金による研究報告が17編、2017年度が1編、および海外留学助成金報告2編が掲載されています。2022年の4月2日に編集委員会が開催されました。昨年、一昨年に続き、今回もSARS-CoV2による新型肺炎Covid-19の影響により、リモート開催となりました。 新型コロナウイルスの感染症を巡り、ワクチン製剤などの開発に加えて、ウイルスの増殖や呼吸機能の障害を抑制する医薬品の探索など、患者を対象に薬効評価試験が実施され、医療現場で使用されています。治療法開発が急務の状況下、臨床薬理学の役割は必須と言えます。こうした中で、臨床薬理研究振興財団は、我が国における臨床薬理学の振興を目的として研究助成をおこなっております。これまでの助成対象者は、医療現場や医薬品開発研究の場で、ご活躍されています。 さて、編集作業ですが、我が国における臨床薬理学の振興を目的として研究助成をおこなっている臨床薬理研究振興財団の理念にふさわしい優れた報告もありました。コロナ禍、行動制限の中で研究を進められ、報告書を作成いただき、敬意を表します。一方、昨今の臨床研究および基礎研究の進め方の重要性が社会的にも注目されている中で、報告書著者へ加筆修正をお願いする事例もありました。大賞選考に当たっては、編集委員の総意に基づいて納得の行く結果を得ることができました。中でも既存薬の新規剤形の開発、肺高血圧症の薬効評価モデルの構築、癌免疫バイオマーカーの創出、血管透過性を標的とした抗炎症薬の開発、アンメットメディカルニーズの高い疾患の新規治療薬の開発を実践した研究が選ばれたことは、臨床薬理学の裾野の広がりを示すものかも知れません。また海外留学助成金による2編の報告は、コロナ禍の中での臨床薬理学研究のグローバル化の推進に貢献するものでした。本研究奨励金が、研究者の大きな励みとなり臨床薬理学の振興に貢献していることを、改めて実感することができました。 最後に、本誌に掲載されている報告書にはいずれも優れた研究内容が含まれており、是非、今後の研究に参考にしていただけると幸いです。2022年5月大戸 茂弘183あ と が き
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