臨床薬理の進歩 No.43
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*1 SUGIMURA KEIJIRO *2 MIYATA HIROSHI *3 YANO MASAHIKO 杉村 啓二郎*1  宮田 博志*2 矢野 雅彦*3はじめに要   旨大阪国際がんセンター 消化器外科 (現:関西ろうさい病院 消化器外科)大阪国際がんセンター 消化器外科      同   上外科的手術(CS)が治療オプションとなり得る。過去の報告によると、T4b食道癌に対し40-60 Gyの化学放射線療法を施行し、32~60%のほうが治癒切除できるようになり、良好な予後につながったとされている。したがって、T4b食道癌に対しては、CSを念頭においた初期治療としては化学放射線療法が広く用いられてきた。 近年、5-FU/シスプラチンにドセタキセルを組み合わせた強力な3剤併用化学療法(DCF療法)が注目されている1,2)。その理論的根拠としては、化学療法のみでは局所への効果は化学放射線療法に劣るものの、手術と組み合わせることによって、化学放射線療法と同等になるというものである。さらには微小転移などの全身的な転移をコントロールするのは、化学放射線療法よりも化学療法のKey words:胸部食道癌、気管・大動脈浸潤、化学放射線療法、3剤併用化学療法、Conversion Surgery 現在、気管や大動脈など周囲臓器へ直接浸潤している食道癌(T4b)に対しては、外科手術の適応はなく根治的化学放射線療法が行われることが多いが、5年生存率10%と予後不良である。しかし、近年の化学療法や 放射線治療の進歩により、切除可能な状態となり根治切除を行う症例が出てきて、導入療法+外科手術(Conversion Surgery、以下CS)が予後を改善する新たな治療戦略として注目されている。今回、CSを念頭においた導入療法として、従来の化学放射線療法と新規の強力な3剤併用化学療法とが有効性・安全性の点でどちらが優れているかを比較するランダム化第Ⅱ相試験を行った。結果、短期成績においては、両群治癒切除率は同等であったが、化学放射線療法から開始したほうが、有害反応が少なく、病理学的効果も高く有望と考えられた。今後、予後解析を含めた長期成績の解析を行う予定である。9Randomized controlled trial of induction therapy for conversion surgery in T4b thoracic esophageal cancer patients; chemoradiotherapy vs chemotherapy 食道は漿膜がない臓器であるため、進行した胸部食道癌は容易に食道壁を貫通しやすい。そのため、進行した食道癌は気管/気管支、大動脈、心嚢、肺など周囲臓器に浸潤しやすい。UICC TMN分類第8版によると、気管/気管支や大動脈に浸潤した食道癌はT4bと分類され、全胸部食道癌の7-9%に相当する。T4b食道癌は、遠隔転移の有無にかかわらず切除不能と考えられており、これまで化学療法と放射線療法を組み合わせた根治的化学放射線化学療法が行われてきたが、その3年生存率は14%と極めて不良であった。 T4b食道癌に対し、化学療法や放射線療法を施行し、縮小が得られて周囲臓器浸潤が解除された場合、気管・大動脈浸潤胸部食道癌に対するConversion Surgeryに向けた導入療法のランダム化比較試験 -化学放射線療法vs化学療法-

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