結 語謝 辞利益相反放射線療法を施行し、42%の治癒切除と、29%の病理学的な完全奏効としている6)。一方で、横田らの報告によると、DCF化学療法を行った場合の病理学的な完全奏効は8%とされている。本試験の前向き臨床試験の結果も、化学放射線療法開始のほうが食道原発巣への効果が高く、過去の報告の結果と一致する結果であった7,8)。 もう1つの注目すべき今回の試験の結果は、両群で病理学的なリンパ節転移の状態が異なっていたことである。実際、本試験での切除例におけるpN2以上の割合が、化学放射線療法開始群よりもDCF化学療法開始群のほうが高い結果であった。この結果は我々の予想に反する。本試験計画時は、DCF化学療法で開始したほうが、全身的な腫瘍のコントロールにすぐれているとの推測から病理学的なリンパ節への効果も高いと想定していた。化学放射線療法開始群のほうがリンパ節転移のコントロールが優れていた理由として推測されることは、本試験で設定していた予防的な照射野が比較的ひろく縦隔リンパ節に設定していたことの可能性が推定される。 有害反応については、化学放射線療法開始群よりもDCF化学療法開始群のほうが有害反応が多く発生した。過去の萩らの報告によると、食道癌に対するDCF化学療法は腫瘍による狭窄がつよい症例のほうが、下痢や発熱性好中球減少などの有害反応がより発生しやすいことが報告されている9)。T4b食道癌は高度狭窄症例が多くふくまれているため、DCF化学療法を行った症例では有害反応が多く発生したと推測される。 今回は、本試験の短期成績についての結果報告を行った。本試験の主要評価項目は2年生存率であり、今後の経過をフォローアップしたうえで、長期予後の解析を予定している。 短期成績においては、化学放射線療法群開始群とDCF化学療法開始群の治癒切除率は同等であったが、化学放射線療法から開始したほうが、有害反応が少なく、病理学的効果も高く有望と考えられた。今後、予後解析を含めた長期成績の解析を行う予定である。本結果は、Annals of Surgery誌10)に掲載された。 本研究を遂行するにあたり、研究の助成を賜りました公益財団法人臨床薬理研究振興財団に心より感謝申し上げます。 本研究に関し、開示すべき利益相反はありません。15
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