*1 OSHIMA KOICHI *2 NAKAZAWA ATSUKO *3 KOH KATSUYOSHI *4 ADOLFO FERRANDO 大嶋 宏一*1 中澤 温子*2 康 勝好*3 Adolfo Ferrando*4はじめに要 旨埼玉県立小児医療センター 血液・腫瘍科埼玉県立小児医療センター 臨床研究部埼玉県立小児医療センター 血液・腫瘍科Institute for Cancer Genetics, Columbia Universityや免疫チェックポイント阻害薬など、新規治療薬の開発が目覚ましい発展を遂げているが、現時点では従来の化学療法剤(抗がん剤)がALL治療の根幹であることに変わりはない。そのような中で、再発ALLに対して、特定の化学療法剤が大きく予後に影響を与えたとする報告は少ない。英国における小児ALLの再発研究であるALL-R3研究の主要課題は、寛解導入療法の最初の2日間にイダルビシンの代わりにミトキサントロンを使用することで予後が改善するかであり、この2薬のランダム化比較試験の中間解析の段階で、ミトキサントロン群がイダルビシン群に対して有意に予後の改善を認めたため、両薬の層別化は中止となり、ミトキサントロン群のみが継続されるという衝撃的な結果となった3)。しかしながら、現時点Key words:再発、急性リンパ性白血病、薬剤耐性機序、新規創薬ターゲット、スクリーニング 再発ALLは、現在の適切な層別化や支持療法および強力な化学療法の下でも、しばしば治療抵抗性であり、 造血幹細胞移植を含む様々な救助療法にも関わらず、治癒が得られる可能性は未だに低い。我々は、再発ALLの 病態機序を探索するために実施したCRISPR-Cas9技術を用いたスクリーニングにおいて、PPM1D遺伝子をノックアウトすることによって、複数の化学療法剤に対して薬剤感受性の亢進が得られることを見出した。次に、PPM1D阻害剤によるこれらの化学療法剤の殺細胞効果の増強を複数の細胞株や患者腫瘍組織移植モデルで確認し、 その併用効果の機序にはp53だけではなく、γH2AXを含むp53経路に関連する分子が関わっていることを 発見した。PPM1D阻害剤は正常細胞にはほとんど効果を示さないことが報告されており、PPM1D阻害剤は、再発ALLに対する併用化学療法の開発において、有望な候補であると考えられた。17Elucidation of drug resistance mechanisms and identification of novel drug targets for 急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、リンパ球の前駆細胞が悪性転換することによって生じ、骨髄および末梢血中にリンパ芽球が過剰に増殖する進行性の血液の腫瘍である。ALLは小児がんの中で最も頻度が高く、15歳未満の小児がんの約25%を占める。強力な化学療法を中心とする治療法の進歩により、成人ALL、小児ALL1)ともに予後は改善しつつあるが、現在でも成人ALLの50%以上、小児ALLの約20%が治療後に再発を認める2)。再発ALLは、しばしば化学療法抵抗性であり、造血幹細胞移植を含む、より強力な救助療法にも関わらず、治癒が得られる可能性は未だに低い。 近年、ALLを含む各がん腫において、分子標的薬relapsed acute lymphoblastic leukemia再発急性リンパ芽球性白血病に対する薬剤耐性機序解明と新規創薬ターゲットの同定
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