臨床薬理の進歩 No.43
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PPP2R1AC7orf26C19orf43BFLHPRT1D2NCNSNRNP40FAWSB1RAD9AAX5orf89XHDCLCGT2EBULCNAFVCRLASP6-MDNRMTXcScreen resultabPCE16TRI0P1P3PM1UDBE2D3DP6GFAMPSensitivityResistanceGene-drug interactionsCCAR1PRPF39ではまだ正式な結論は発表されていないものの、その後の研究によって全生存率については、ミトキサントロン群とイダルビシン群で有意な差は認めなかったという報告がなされている4)。このように、再発ALL患者に対して、さらなる抗がん剤による単純な治療強化は効果が望めないだけではなく、治療関連毒性を増悪する可能性が高くなるため、効率の良いターゲット療法の開発が望まれている。 近年のゲノムの網羅的解析研究によって、再発ALLのゲノム異常について多くの知見が得られつつあるが5)、再発ALLで見つかるほとんどの変異遺伝子の病態における意義は分かっていない。以上より、ALLの病態進行、再発および化学療法抵抗性の機序を解明することが本疾患研究の最優先事項である。我々は、再発ALLに関連する遺伝子変異が、どのように化学療法抵抗性のドライバーとなるのかを調べ、治療ターゲットを発見するために、CRISPR-Cas9技術を用いたスクリーニングを実施した6)。BCP-ALL細胞株(REH細胞)にテトラサイクリン誘導性のCas9遺伝子を導入し、ピューロマイシンで選択後にヒトの全ゲノム、つまり、約2万遺伝子を対象とするGeCKOライブラリ(ガイドRNAライブラリ)をレンチウイルスで感染導入した。図1 CRISPR-Cas9システムを用いたゲノムワイドの化学療法剤と遺伝子の相互作用のスクリーニングa REH B細胞性ALLを用いたテトラサイクリン誘導性CRISPR–Cas9ノックアウトスクリーニングのシェーマ b 7つの化学療法剤を用いたそれぞれのCRISPRスクリーニングで得られた多彩なgRNAの選択プロファイルが異なる遺伝子を表したサーコスプロット。緑色のリンクは薬剤感受性を、赤色のリンクは薬剤抵抗性を示す。MAF: マホスファミド、VCR: ビンクリスチン、6-MP: 6-メルカプトプリン、MTX: メトトレキサート、AraC: シタラビン、DNR: ダウノルビシン、LASP: L-アスパラギナーゼ。c CRISPRスクリーニングで得られたPPM1D遺伝子の順位[log2(Fold Change)]。マイナス方向に大きいほど薬剤感受性が、プラス方向に大きいほど薬剤抵抗性が亢進するという結果。この際に、1細胞につき、1つのガイドRNAが導入される感染効率を用いたため、Cas9を誘導発現すると、1細胞につき1つの遺伝子のみがノックアウトされる細胞集団を得られ、ALLで用いられる7つの抗がん剤を1剤ずつ用いてスクリーニングを実施した(図1a)。興味深いことに、p38–p53シグナルのネガティブフィードバック機構に関与するProtein Phosphatase、Mg2+/Mn2+Dependent 1D(PPM1D)遺伝子をノックアウトすることによって、メトトレキサートとL-アスパラギナーゼ以外の5剤に対して薬剤感受性が亢進されるという結果を得た(図1b、c)。 本研究の仮説は、1)PPM1DはALL治療におけるターゲット分子となる、2)PPM1Dを阻害することによって化学療法剤の治療効果を増強する、3)PPM1Dは再発ALL患者に対する新規治療戦略の候補となりうる、というものである。 この仮説を検証するためには、単に薬剤感受性を細胞株等で確認するだけではなく、再発ALLの病態および治療におけるPPM1Dの関与を分子学的に考察する必要がある。以上を背景とし、本研究の目的は、①ALL細胞に対するPPM1D阻害剤の治療効果を検証すること、②ALL細胞に対する18Tet-On Cas9lentiviral infectionPuromycinSelectionREH B-ALLTet-On Cas9DruglogFCMAF-1.47VCR-1.056-MP-0.67MTX0.7AraC-1.14GeCKO librarylentiviral infectionChemotheraphy 7 day IC905 daysDoxycyclineVehicleDNR-0.98LASP0.26AraCC

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