方 法PPM1D阻害剤と各種化学療法剤の併用治療効果を検証すること、③再発ALL患者の病態におけるPPM1Dの関与の検証をすること、の3点であり、これらの目的を達成するために、研究を計画した。再発ALL患者データを用いた発現変動遺伝子描出 再発ALL患者の初発時および再発時検体の発現変動遺伝子を比較するために、the Therapeutically Applicable Research to Generate Effective Treatments(TARGET)project(Database of Genotype and Phenotype(dbGaP)access number phs000464)における80例のRNAseqデータを用いた。 ソフトウエアDESeq2を用いて、リードカウントの値をもとに正規化を行い、サンプル間の発現量差[log2(FoldChange)]を算出し、発現変動遺伝子(DEG:Differentially Expressed Gene)の抽出を行い、Volcanoプロットによる可視化を行った。細胞培養 細胞培養は、37 ℃、5%CO2の加湿環境下で行った。HEK293T細胞はGeneCopoeia社、REH細胞はThermo Fisher Scientific社から購入し、RCH細胞は共同研究者のAdolfo Ferrando labから供与された。HEK293T細胞は、10%胎児ウシ血清(FBS)、100 U/mLペニシリンGおよび100μg/mLストレプトマイシンを添加したDMEM培地で培養した。REHとRCH細胞は、10% FBS、100 U/mLペニシリンGおよび 100μg/mLストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地で培養した。初代患者腫瘍組織移植モデル(Patient-derived xenografts; PDXs)としてのALL細胞は、NRG(NOD.Cg- Rag1tm1Mom/I2rgtm1Wjl/SzJ、Jackson Laboratory)マウスに移植後、マウスの脾臓から採取し、20%FBS、100 U/mLペニシリンGおよび100μg/mLストレプトマイシン、10 ng/mLヒトIL-7を添加したRPMI培地で培養した。使用薬剤 メトトレキサート(MTX)、6-メルカプトプリン(6-MP)、シタラビン (AraC)、ダウノルビシン (DNR)、ビンクリスチン(VCR)は、Sigma-Aldrich社から、マホスファミド(MAF)はSanta Cruz Biotechnology社から、L-アスパラギナーゼ(LASP)はBioVendor社から、GSK2830371はSelleckchem社から購入した。in vitro実験では、LASPは水で溶解したが、その他の薬剤は全てdimethylsulfoxide(DMSO)で溶解した。In vitro細胞生存アッセイおよび薬剤感受性試験 In vitroでのヒトALL細胞株の細胞生存率と薬剤感受性は、Cell Proliferation Kit I(Roche社)を用いてテトラゾリウム塩MTXの代謝還元を測定することにより、評価した。この実験では、各抗がん剤の段階希釈系列を用いて72時間または96時間培養した後の薬剤感受性を評価した。 PDXsのALL細胞の細胞生存率と薬剤感受性はCell Viability Kit with liquid counting beads(BD Biosciences)を用いたフローサイトメトリーによって定量した。全ての実験はtriplicatesで行った。ウェスタンブロッティング 以下の抗体を用いてウェスタンブロッティングを標準的な方法で実施した。 p53(1C12)(1:1,000; 2524、Cell Signaling Technology)、Phospho-p53(Ser15)(1:1000; 9284、Cell Signaling Technology)、γH2AX(Ser139)(1:2,000; 613402、Biolegend)、PPM1D/WIP1(1:200; sc-376257、Santa Cruz Biotechnology)、Vinculin (VIN-11-5)(1:2,000; NB120-11193、Novus Biologicals)。統計解析 有意差解析には、分散が等しいと仮定してstudent t-test を用いた。連続的な生物学的変数は正規分布に従うと仮定した。p値が0.05未満を統計的に有意性を示すとした。1919
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