対象と方法できる手法であり、精神疾患の基盤となる脳神経回路を非侵襲的に調べることができるという強みがある5)。 そこで本研究では、脳機能的接続の特徴を疾患横断的に探索した上で、統合失調症と大うつ病性障害における脳機能的接続と向精神薬との関連を調査することを目的とする。精神疾患における脳機能的接続の変化や向精神薬が脳機能的接続に与える影響については、先行研究の結果がさまざまであり、本研究は仮説フリーの全脳レベル解析とする。各疾患において、向精神薬と関連する脳機能的接続を特定することが本研究の目標となる。このような解析により、向精神薬が精神症状に与える影響を、脳機能的に観察することが可能になると推察される。倫理 全ての研究参加者より、研究参加前に、書面によるインフォームドコンセントを得た。本研究はヘルシンキ宣言に従っており、全ての研究プロトコルは東京大学医学部倫理委員会により承認を得た(審査番号:3150)。研究参加者 本研究では、統合失調症、大うつ病性障害を有する患者のほか、双極性障害、自閉スペクトラム症を有する患者、および健康成人者を対象とした。研究参加者は、東京大学医学部附属病院精神神経科でリクルートされた。統合失調症、大うつ病性障害、双極性障害は、精神科診断面接マニュアルStructured Clinical Interview for DSM-Ⅳ(SCID)を用いて診断された。また自閉スペクトラム症は、DSM-Ⅳで診断された。また健康成人者は、Mini-International Neuropsychiatric Interview(M.I.N.I.)を用いて、精神疾患を除外された。アルコール・薬物依存、5分以上の意識消失を伴う頭部外傷歴、脳画像解析に影響を与えうる脳器質的疾患、精神状態に影響を与えうる身体疾患、電気けいれん療法の受療歴を有する参加者を、その後の解析から除外した。MRI画像取得 各研究参加者より、MRI T1強調画像およびrs-fMRI画像を取得した。撮像は、東京大学医学部附属病院に設置されたGE Discovery MR750w(磁場強度3.0T)を用いて施行した。T1強調画像の撮像パラメタは、繰り返し時間(repetition time; TR):7.7 ms、エコー時間(echo time; TE):3.1 ms、フリップ角:11度、収集マトリックス:256×256、視野範囲:260 mm×260 mm×240 mm、ボクセルサイズ:1 mm×1 mm×1.2 mm、スライス数:200、撮像方向:矢状断とした。またrs-fMRI画像の撮像パラメタは、TR:2500 ms、TE:30 ms、フリップ角:80度、収集マトリックス:64×64×40、視野範囲:212 mm×212 mm×160 mm、ボクセルサイズ3.3 mm×3.3 mm×4.0 mm、スライス厚 3.2 mm(スライスギャップ 0.8 mm)、スライス数:40、撮像方向:軸位断とし、全部で240回のスキャン(および4回のダミースキャン)が施行された。研究参加者はrs-fMRIの撮像中、眠らないようにして、できる限り何も考えずに、スクリーン中心の固視点を見続けるよう要請された。MRI画像処理 rs-fMRIデータは、Data Processing Assistant for Resting-State fMRI(DPARSF)ソフトウェアで解析した。撮像データに対して、ダミースキャンおよび最初の10スキャンを除外したのち、スライスタイミング補正、リアラインメント、空間的標準化、空間的スムージングの処理、バンドパスフィルター(0.01–0.1 Hz)を施行した。次に、頭部の動きの時間経過、頭部の動きのスクラブ、白質・脳脊髄液信号で補正した。その後時系列データを、Automated Anatomical Labeling(AAL)アトラスで定義される116の脳領域に対して、ボクセル平均を用いて計算した。最後に、各領域ペアにおけるFisher変換した26
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