臨床薬理の進歩 No.43
60/233

結  果し、2つまたは1つのソフトでしか検出されていない場合は、さらにIntgrative Genomics Viewer(Broad Institute、Cambridge、MA)にて目視により有無を確認した。DNA量が700μgより少ない症例(N= 190)は、がん研にてMiSeqを使用して解読を行った。ライブラリーの構築には、NEBNext Ultra Ⅱ DNA Library Prep Kit for Illumina(New England Biolabs、Ipswich、MA)を使用した。MiSeqのカバレージ中央値は、18,560リードであり、バリアントの検出は、Haplotype Caller、MuTect2およびLofreqの3つのソフトを使用した。Novogene laboratoryでの解析と同様に、3つのソフトで検出された場合は「変異」とし、2つまたは1つのソフトでしか検出されていない場合は、さらにIntgrative Genomics Viewer(Broad Institute)にて目視により変異の有無を確認した。 Novogene laboratoryおよびがん研にて、合計359症例(98.9%)のTP53シークエンスの解読を行った。TP53遺伝子変異とMSIの因果関係の可能性を考慮し、mutation allele frequency(MAF)が0.2以上のバリアントを採用した。検出されたバリアントは、「missense」、「truncating(nonsense、またはフレームシフトを伴う変異)」、「inframe(フレームシフトが起こらない変異)」および「not detected(変異なし、またはsilent mutation)」の4つへ分類した。トランスクリプトーム解析 GeneChipを使用し、トランスクリプトーム解析を行った。新鮮凍結検体より、miRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を使用してtotal RNAを抽出した。続いて、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies)にてtotal RNAの品質を確認した。条件を満たしたサンプルのみ、Clariom D Array、human(Applied Biosystems)を使用し、マイクロアレイ発現解析を行った。統計解析 本研究での統計解析は全て、JMP ver.13(SAS Institute、Cary、NC)を使用して行った。TCGAデータベースとの比較検討 本研究で得られた結果を、TCGAの食道胃接合部腺癌のパブリックデータと比較検討した14)。データはcBioPortal for Cancer Genomics(http://www.cbioportal.org)よりダウンロードし、TP53遺伝子については、前述と同様、MAFが0.2以上のバリアントのみを採用した。TCGAの食道がんおよび胃がんのTP53遺伝子バリアントはMutTectを使用して検出されたもので、結果のファイルはThe Cancer Genomics Hub(Genomic Data Commons National Cancer Institue、https://docs.gdc.cancer.gov)よりダウンロードした。 ただしMSI-PCR assayに関しては、本研究での6マーカーに対し、TCGAではこの6マーカーにtransforming growth factor receptor typeⅡ(TGFR-Ⅱ)を加えた7マーカーを使用されていた。TCGAのデータは、不安定性ありと判定されたマーカーが40%以上の場合はMSI-H、1-39%の場合はMSI-L、またいずれのマーカーでも不安定性がないと判定された症例をMSSと分類されていた。EBV関連腫瘍の割合 EBV関連腫瘍は、上部消化管腺癌では独立した特徴的な分子亜型とされ、MSI-H腫瘍とは異なる発がん経路をもつと考えられている。このため、まずEBV関連腫瘍を検出し、本研究の対象から外すこととした。372症例のFFPE由来のDNAを鋳型として、real-time PCR法にてEBV-DNAの検出を行ったところ、10例にEBV-DNAの増幅が認められた。さらに、この10症例に、ゴールドスタンダードとされているEBER-ISH法を追加して確認したところ、核内EBERの発現は9例で陽性(図3a)と判定された。1例は腫瘍細胞ではなくリンパ球の発現であったことから、偽陽性(EBV関連腫瘍ではない)と判断した(図3b)。この偽陽性の1例46

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る