臨床薬理の進歩 No.44
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)Lm/gnル(ィフラダタ00246845040035030025020015010050図4 個々の母体のタダラフィル血中濃度時間(h)10 mg/回20 mg/回1012考  察 (コホート2)頭痛:1例 すべての有害事象において、Grade 1であった。母体の有害事象  (コホート1)食欲不振:2例、筋肉痛:1例、動悸:2例胎児の有害事象 (コホート1)なし (コホート2)なし新生児の有害事象(出生時・生後1ヶ月)  (コホート1)新生児一過性多呼吸:1例、聴性脳幹反応異常:1例  (コホート2)新生児一過性多呼吸:1例、胎便吸引症候群:1例 すべての有害事象が、タダラフィルとの因果関係がないと判断した。薬物動態パラメータ 個々の母体のタダラフィル血中濃度を図4に示す。臍帯静脈におけるタダラフィル血中濃度の平均値は57.8±47.4 ng/mL(n=6)であった。タダラフィルの最高血中濃度(Cmax)は平均176.1±125.1 ng/mL、最高血中濃度に達するまでの時間(Tmax)は平均3.3±1.0 h、血中濃度-時間曲線下面積(AUC0-12)は平均1070.2±853.3 h×μg/Lであった。 我々は、タダラフィルを用いた胎盤形成不全によるFGRと分娩中の胎児低酸素性虚血性脳症に対する臨床試験を実施した。FGRに対する臨床試験(TADAFERⅡb試験)は継続中であり、残念ながら、本報告において結果を示すことができなかった。分娩中の胎児低酸素性虚血性脳症に対する臨床試験(TADAFLⅠ試験)において、分娩中のタダラフィル投与の母体・胎児・新生児に対する安全性を示すことができた。TADAFERⅡb試験 我々は、原発性肺高血圧症を有する妊婦に投与された、PDE5阻害薬の1つであるタダラフィルが、肺血管拡張作用に加えて胎児発育促進作用を有する可能性を見出したことを契機に、タダラフィルをFGRの新規治療薬として検討を開始した。 基礎的研究において、FGRモデルマウスにタダラフィルを投与し、タダラフィル非投与群に比較し、胎仔体重の有意な増加を観察した9)。加えて、FGRモデルマウスでは、胎仔脳の免疫染色によって灰白質のシナプス形成、白質の髄鞘化、microglia発現が抑制されていることが観察されたが、タダラフィル投与にてこれらの改善が観察された17)。これらの基礎研究の結果、ヒトへの安全性を検証するための第Ⅰ相試験を実施し、母体・胎児の安全性が確認された8)。また、第Ⅱ相試験において、タダラフィル投与において、有意な胎児・新生児・乳児死亡の減少と妊娠延長効果・胎児発育促進作用が確認された。同時期、イギリス、オランダ、ニュージーランド、カナダにおいて、PDE5阻害薬の1つであるシルデナフィルを用いた、FGRを対象にした臨床試験が実施されていた。オランダにおいて、シルデナフィル投与群に肺高血圧症に関連した新生児死亡の増加が報告され、試験の中止が勧告された16)。タダラフィルによる第Ⅱ相試験では、タダラフィル治療群45例、従来治療群44例が登録され、胎児・新生児・乳児死亡が従来治療群で7例89

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