臨床薬理の進歩 No.44
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方  法ことが多数報告されており1,2)、血小板減少の発現には、リネゾリドあるいは代謝物の排泄遅延の関与が指摘されている。 プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、ストレス性潰瘍予防を目的として重症患者の多くで使用され、リネゾリド投与患者においても併用されるケースは多い。リネゾリド投与患者ではPPIの併用の有無で、血小板減少の発症頻度は大きく変わらないことが報告されている5)。しかしながら、リネゾリドを投与された小児患者を対象とした薬物動態/薬力学(PK/PD)解析に関する報告では、PPIの併用によりリネゾリドの血中トラフ濃度が上昇する可能性が示唆されており6)、リネゾリドとPPIの薬物間相互作用についての見解が分かれている。一方、PPIは薬物の尿細管分泌に関与する有機アニオントランスポータ3(OAT3)や有機カチオントランスポータ2(OCT2)を介した薬物輸送を阻害することが知られている7,8)。リネゾリドあるいは代謝物(PNU-142300及びPNU-142586)の尿細管分泌に関わる薬物トランスポータの情報はほとんど存在しないが、PNU-142300及びPNU-142586は構造中にアニオン部位(カルボキシ基)を有していることから9)、OATの基質として認識され、尿細管分泌過程においてPPIと薬物間相互作用が生じる可能性がある。 本研究では、リネゾリドを投与された患者を対象とした後方視的研究及び医療リアルワールドデータであるFDA有害事象報告(FAERS)データベースを用いた解析により、リネゾリドの血小板減少に及ぼすPPI併用の影響を調査した。さらにOAT1及びOAT3安定発現細胞株を用い、薬物トランスポータを介したリネゾリド及び代謝物とPPIとの薬物間相互作用についても検討を行った。リネゾリド投与患者における血小板減少に及ぼすPPIの影響に関する後方視的研究 2010年1月から2020年6月に大阪大学医学部附属病院においてリネゾリド注射液600 mgを1,200 mg/日で投与されたICU入院患者225名を対象とした。治療開始時の血小板数が100(×109/µL)未満の患者、リネゾリドの投与期間が3日未満の患者、血小板輸血を受けた患者、調査項目に欠損値がある患者は除外した。リネゾリド投与開始時より血小板数が30%以上の減少あるいは100(×109/µL)未満の減少を認めた場合に血小板減少ありと判定した1)。血小板減少を従属変数とし、年齢、性別、リネゾリド投与量、リネゾリド投与期間、治療開始前の血小板数・クレアチニンクリアランス(CCr)・総ビリルビン値、ランソプラゾールの併用、他のPPIの併用を独立変数に組み込んだ多変量ロジスティック回帰分析により、リネゾリド投与患者における血小板減少に及ぼすPPI併用の影響を検討した。さらにランソプラゾール併用群と非併用群に分類し、リネゾリド投与後の血小板数最低値及び血小板減少発症までの期間に及ぼすランソプラゾール併用の影響について検討した。なお、本研究は大阪大学医学部附属病院倫理委員会の承認を受けて実施した(No.16002-8)。リネゾリド投与による血小板減少に及ぼすPPIの影響に関するFAERS解析 2014年7月から2019年12月の期間にFAERSに登録されたデータベースから患者情報、医薬品情報、有害事象名を抽出した。重複報告を削除し、リネゾリドが投与された報告を解析に使用した。MedDRA/J ver.24.0の「造血障害による血小板減少症(SMQ: 20000027)」に含まれる基本用語を用いて抽出した。リネゾリド投与による血小板減少の有害事象報告に及ぼすPPIの影響を評価するため、2×2のクロス集計表を基に、PPI併用患者及び非併用患者に分類し、各群におけるリネゾリド投与による血小板減少報告割合、報告オッズ比、95%信頼区間を算出した。細胞株と細胞培養 ヒト胎児腎由来細胞(HEK293細胞)に遺伝子導入によりヒト有機アニオントランスポータ194

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