臨床薬理の進歩 No.44
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考  察(図3A、3B)。一方で、PNU-142586の細胞内取込み量は、HEK-pBK細胞と比較し、HEK-hOAT3細胞で有意に高かった(図3C、p<0.01)。HEK-pBK細胞及びHEK-hOAT3細胞におけるPNU-142586の時間依存的細胞内取込み量及びhOAT3を介したPNU-142586の細胞内取込みに対するプロベネシドの阻害効果 hOAT3を介したPNU-142586の輸送特性を評価するため、PNU-142586の細胞内取込み量の時間図4 HEK-pBK細胞及びHEK-hOAT3細胞における(A)PNU-142586の時間依存的細胞内取り込み量及び(B)hOAT3を介したPNU-142586の細胞内取り込みに対するプロベネシドの阻害効果(A)HEK-pBK細胞(○)及びHEK-hOAT3細胞(●)に1 µMのPNU-142586を添加し、37 °Cで5分間インキュベーション(pH 7.4)を行った。平均値±標準誤差(n=3), *: p<0.05, **: p<0.01, ***: p<0.001 vs HEK-pBK細胞、Student’s t検定を用いて統計解析を行った。(B)HEK-hOAT3細胞を100 µMプロベネシド非存在下あるいは存在下において1 µMのPNU-142586を添加し、37 °Cで5分間インキュベーション(pH 7.4)を行った。平均値±標準誤差(n=3), **: p<0.01 vs control、Student’s t検定を用いて統計解析を行った。図5 HEK-hOAT3細胞におけるPNU-142586の細胞内取込みに対するランソプラゾールの阻害効果HEK-hOAT3細胞を様々な濃度のランソプラゾール存在下において、1 µMのPNU-142586を添加し、37 °Cで5分間インキュベーション(pH 7.4)を行った。平均値±標準誤差(n=3)依存性について評価した(図4A)。HEK-hOAT3細胞におけるPNU-142586の細胞内取込みは時間依存的に上昇し、5分、10分、15分間におけるPNU-142586の細胞内取込み量は、HEK-pBK細胞と比較し、有意に高かった。さらに、OAT3の典型的阻害薬であるプロベネシドの共存下において、HEK-hOAT3細胞におけるPNU-142586の細胞内取込みは顕著に減少した(図4B)。HEK-hOAT3細胞におけるPNU-142586の細胞内取込みに対するランソプラゾールの阻害効果 hOAT3を介したPNU-142586の細胞内取込みに対するランソプラゾールの阻害効果について検討した(図5)。PNU-142586の細胞内取込みはランソプラゾールの同時曝露により濃度依存的に抑制され、阻害曲線から算出したランソプラゾールの見かけのIC50値は0.59 ± 0.22 µMであった。 リネゾリドとPPIとの薬物間相互作用はこれまでほとんど知られていない。本研究は、ランソプラゾールがhOAT3を介したリネゾリドの主要代謝物であるPNU-142586の輸送を阻害し、リネゾリド98

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