臨床薬理の進歩 No.44
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薬物動態関連遺伝子多型のSNP解析 血液検体2 μLに対し、Lysis Solution(Applied Biosystems社、Waltham、MA、USA)を20 μL添加した後、十分にピペッティングで混和後遠心分離を行い、室温で3分間放置した。その後、DNA Stabilizing Solution®(Applied Biosystems社)を20 μL加えてピペッティングで混和後遠心分離を行い、DNAサンプルをSNP解析に用いるまで4 ℃で保存した。TaqMan® GTXpressTM Master Mix 5 μL、TaqMan® SNP Genotyping Assay 0.5 μL(いずれもApplied Biosystems社)、超純水 3.5 μLを混合した溶液を96ウェルのマイクロプレートに9 μL分注した後、DNAサンプルを1 μLずつ各ウェルに添加しよく混和した。各ウェルに気泡が入っていないことを確認後、StepOnePlusTMリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社)を用いて薬物動態関連遺伝子を解析した。アピキサバンがABCB1、ABCG2、CYP3A4/5の基質になることから、本研究ではABCB1 1236C>T、ABCB1 2677G>T/A、ABCB1 3435C>T、ABCG2 421C>A、CYP3A5 6986A>G(*3)の5種類の遺伝子配列を解析した。アピキサバン内服による出血に影響を及ぼす要因の解析 同院の電子カルテよりアピキサバン内服に伴う有害反応である出血症状が認められる場合を「出血あり」群、出血症状が認められない場合を「出血なし」群に層別化した。 出血の有無と臨床検査値、アピキサバンの体重当たりの投与量(D/BW; mg/kg)、併用薬、薬物動態関連遺伝子多型の関係について解析した。また、腎機能の指標であるクレアチニンクリアランス(CLcr)はCockcroft-Gault式(1)を用いて算出した。CLcr(mL/min)=(140−AGE)BW0.85F ここで、式1中のScr、AGEおよびBWはそれぞれ血清クレアチニン値、年齢および体重を表し、べき指数Fは男性の場合に0、女性の場合に1とする2値変数である。出血の有無と腎機能の関係72 Scr(1)について解析する場合、腎機能の指標としてCLcrを用いた。また、肝機能の指標としてアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニントランスフェラーゼ(ALT)を選択した。また、腎機能と肝機能に関する臨床検査値については同院における基準値に従って層別化し、各群における出血の有無について比較検討した。 臨床検査値やアピキサバンの投与量と出血症状の有無の関係についてはマン・ホイットニーのU検定により評価し、併用薬や薬物動態関連遺伝子多型の関係についてはフィッシャーの直接確率検定またはコクラン・アーミテージの傾向検定により評価した。2群間で有意な傾向が見られた評価項目を独立変数、出血の有無を従属変数とし、二項ロジスティック回帰分析を行った。ABCG2を介したアピキサバンとフェブキソスタットの相互作用に関する薬剤疫学的解析 独立行政法人医薬品医療機器総合機構が提供している医薬品有害事象データベース(JADER)や、米国食品医薬品局が提供している有害事象自発報告データベース(FAERS)からアピキサバンによる出血症状や血栓塞栓症に関する情報を抽出し、フェブキソスタットに及ぼすアピキサバンの発症頻度を比較検討した。JADERとFAERSはそれぞれ2013年1月から2021年12月、2015年1月から2021年12月の期間に報告されたデータを抽出し、有害事象名はICH国際医薬用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities; MedDRA)に準拠した基本語により抽出した。統計解析 シグナル検出には統計ソフトJMP Pro ver. 16(SAS Institute Inc、Cary、NC、USA)を用いて、報告オッズ比(Reporting Odds Ratio; ROR、式2)とその95%信頼区間(CI)(式3)を算出した。ROR=a/c=adbcb/d(2)104

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