臨床薬理の進歩 No.44
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謝  辞阻害する結果、アピキサバンの曝露量が増大し、出血しやすくなる可能性が考えられる。 ABCG2 421C>Aのアレル頻度には人種差が認められ、コーカサス人におけるアレル頻度は4.5–11.7%であるのに対し、アジア人におけるアレル頻度は28.9–35.7%である15)。また、解析対象患者におけるABCG2 421C>Aのアレル頻度は29.0%であったことから(表2)、ABCG2 421C>Aの遺伝子解析はアピキサバンによる出血を回避する点で臨床的に意義深いと考えられる。今後、アピキサバンの曝露/応答解析を実施することで、アピキサバンによる出血頻度に及ぼすアピキサバンの体内動態やフェブキソスタット併用の影響を明らかにし、アピキサバンの適正使用を実践する上で必要な情報を更に集積していく必要がある。 以上、ゲノム薬理学的解析により、ABCG2 421A/A遺伝子型を保有する患者では、C/CやC/A遺伝子型を保有する患者と比較して出血頻度が有意に高くなることが明らかになった。また、薬剤疫学的解析により、フェブキソスタットのABCG2阻害作用によりアピキサバンの出血頻度が上昇する可能性が示された。本研究成果は、アピキサバンの有効かつ安全な個別化抗凝固療法の実践ための有用な情報を提供するものであると考える。 本研究を遂行するに際して、貴重な研究助成を賜りました公益財団法人臨床薬理研究振興財団に深謝いたします。また、ゲノム薬理学的解析の対象患者に関する臨床検査値の取り纏め、薬物動態関連遺伝子のSNP解析に格別の御指導ならびに御協力を賜りました、京都大学医学部附属病院 薬剤部 教授・薬剤部長(前 滋賀医科大学附属病院 薬剤部教授・薬剤部長)寺田智祐 先生、同院 薬剤部 特任助教(前 立命館大学薬学部 助教)平大樹 先生、滋賀医科大学医学部附属病院 薬剤部教授・薬剤部長 森田真也 先生をはじめとする滋賀医科大学医学部附属病院 薬剤部の諸先生方に心より御礼申し上げます。さらに、ゲノム薬理学的研究を遂行するに際して、解析対象患者の選定、臨床検体ならびに臨床情報の提供に特段のご協力を賜りました、滋賀医科大学 名誉教授 堀江稔 先生、同大学医学部 循環器内科教授 中川義久 先生をはじめとする滋賀医科大学医学部附属病院 循環器内科の諸先生方に心より御礼申し上げます。108

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