臨床薬理の進歩 No.44
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CYP2C19のSNPのジェノタイピング 全ゲノムジェノタイピングの精度を確認するために、ランダムに30サンプルについて、DNAをmultiplex PCR後Invader assayでCYP2C19*2、CYP2C19*3の遺伝子解析を実施した12)。30サンプル、全SNPにおいて、全ゲノムジェノタイピングとInvader assayでの解析は一致していた。患者情報の抽出 患者背景(性別、生年月、身長、体重、バイタルサイン、基礎疾患、感染症診断名、起因菌、併用薬の種類と量、臨床経過、予後)、血液検査、血液生化学検査(血算、血清クレアチニン値、血清トランスアミナーゼ値、アルブミン値、CRPなどの炎症所見、および測定日)、特殊検査・測定(ボリコナゾール血中濃度、および測定日)、薬剤投与の有無や服薬状況など(ボリコナゾール投与量、投与回数、投与間隔、投与期間)、有害作用と副作用の確認(ボリコナゾール投与中の肝機能障害、腎機能障害、視覚障害、骨髄抑制等の有無)について電子診療録から後方視的に情報を抽出した。薬物動態の解析 母集団薬物動態解析はPhoenix NLMEを用い、一次条件付き推定(FOCE)法を用いて、すべてのモデルパラメータを推定した。経口投与および静注投与後の血中濃度推移は、既報で示される1次吸収過程のある混合線形および時間依存の非線形(Michaelis-Menten)排出を伴う2コンパートメントモデルを基本モデルとした。非線形排泄は既報の小児を対象とした薬物動態解析のVmax-Kmモデルを採用した12)。Vmax は初期投与後時間とともに初期値から減少するようにした。時間ゼロのVmaxに関する情報が存在しないため、1時間のVmax(Vmax, 1)を推定パラメータとするようにVmax関数をパラメータ化した。時間経過に伴うVmaxの減少は、阻害率(Vmax,inh)で記述した。投与開始後、最大阻害作用の半分が発現する時間(T50)は、2.4 hr(既報値)に固定した。経口投与では、バイオアベイラビリティ(F)、吸収速度(ka)、ラグタイム(Tlag)を推定した。クリアランスについて、最大排泄速度(Vmax)、線形クリアランス(CL)、コンパートメント間クリアランス(Q)は、アロメトリックスケーリングした体重(0.75乗)あたりの値で表した。また中心および末梢コンパートメントの分布容積(VおよびV2)は、体重あたりの値で表した。クリアランス、分布容積ともに体重70 kgあたりの値にスケーリングした。共変量探索 患者背景因子として、疾患、CYP阻害薬併用の有無、CYP2C19遺伝子多型(*17/*17:ultra rapid metabolizer [URM]、*1/*17:rapid metabolizer [RM]、*1/*1:normal metabolizer [NM]、*1/*2, *1/*3、*2/*17:intermediate metabolizer [IM]、*2/*2、*2/*3, *3/*3:poor metabolizer [PM])、検査値の有害作用Grade(CTCAE ver5.0に基づきグレーディング:総ビリルビン値上昇、AST上昇、ALT上昇、γ-GT上昇、クレアチニン上昇、血球減少、血小板減少、好中球減少)をカテゴリカル変数として、CRP(平均値で補正)を連続変数として、クリアランスおよび分布容積の各種パラメータ(CL、Q、Vmax、Vmax,inh、V、V2)への影響を検討した。また剤形として錠剤またはドライシロップについてカテゴリカル変数として、ka、Tlag、Fへの影響を検討した。ステップワイズ法により共変量を検討し、最尤法による目的関数-2LLが有意に低下する場合(Δ-2LL>6.63、尤度比検定でp<0.01)にモデルを改善するパラメータ共変量として組み込んだ。遺伝子解析結果と薬物動態との関連解析 遺伝子解析結果と、ボリコナゾールの血中濃度を含めた臨床情報を統合し、CYP2C19の遺伝子多型がボリコナゾールの薬物動態に与える影響について解析を実施した。統計解析 一般的な統計解析はSPSSあるいはR(R Core 112

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