臨床薬理の進歩 No.44
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表1 患者背景と解析対象測定点症例数(男児, %)年齢中央値(range)a体重中央値(range)a総測定点(静脈投与後, %)b静注投与量中央値(mg/kg/dose, IQR)経口投与量中央値(mg/kg/dose, IQR)結  果項目数値60(32, 53.3%)5.3歳(0.3-24.2)16.7 kg(2.8-56.0)526(130, 24.7%)8.31(6.8-9.6)7.63(5.0-9.0)a, 初回投与時; b, 27点はbelow quantifiable limit (BQL); IQR, interquartile rangeTeam(2017). R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. URL https://www.R-project.org/)を用い、カテゴリー値の比較はFisherの正確確率検定を実施した。両側検定でp<0.05を有意とした。倫理的配慮 本研究は国立成育医療研究センターの倫理委員会で審議され、承認を得た上で実施された(承認番号 国立成育医療研究センター:2288、理化学研究所:2019-27)。すべての研究対象者の保護者もしくは本人(成人患者の場合)に研究に関して説明文書を用いて説明を実施し、文書による同意を得た。また7–15歳までの患者に対してはアセント文書を用いてインフォームドアセントを実施した。患者背景 ボリコナゾール血中濃度データが得られた合計60症例(男児32例 [53.3%]、年齢中央値5.9歳、体重中央値16.7 kg)、このうち、経口投与のみが35例(58.3%)、静脈内投与のみが7例(11.6%)であった。定量限界(0.09 µg/mL以上)で解析可能な血中濃度は526点であった(表1)。CYP2C19の遺伝子多型はNM22例、IM27例、PM11例だった。基礎疾患の内訳は、血液腫瘍患者が37例(61.7%)、免疫不全患者が17例(28.3%)、固形腫瘍患者が2例(3.3%)、その他4例(6.7%)であった。母集団薬物動態解析 モデル構造の決定と共変量探索 基本モデルによる最尤法の目的関数(-2LL)の比較により、誤差モデルは比例誤差モデルが選択された。観測集団において、-2LLが最小となるモデルにおけるパラメータ推定値を得た(表2)。CYP2C19遺伝子多型(IMおよびPM)、γ-GT(Grade 2以上)、CRPがVmax,inh(logit関数)、剤形がFの共変量として組み込まれた。Vmax,inhはCYP2C19 遺伝子型のうちPMでは、完全に阻害を示すと予測された。またγ-GT Grade 2以上は、Grade 2未満の時と比較し、Vmax,inhの推定パラメータが0.8高くなった。またCRP上昇によりVmax,inhの上昇が生じることが示され、CRPが2.0 mg/dL(母集団中央値)以上では、Vmax,inhの推定パラメータが2.7高くなった。またFが剤形の影響を受けていた。推定されたFは、錠剤、ドライシロップでそれぞれ55.0%、79.0%だった。今後bootstrap法によるパラメータ推定値の妥当性検証を実施する予定である。CYP2C19遺伝子多型と有害作用発症割合 CYP2C19遺伝子多型と有害作用発症割合について、表3に示した。各症例の有害作用の最大Gradeについて評価した。 遺伝子多型と有害作用発症およびそのGradeに関連は認められなかった。113

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