臨床薬理の進歩 No.44
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−−−−−−−Fd−−表2 母集団薬物動態解析によるモデルパラメータ推定値Km (µg/mL)Vmax,1 (mg/hr/70 kgb)Vmax,inhcT50 (hr)CLlin (L/hr/70 kgb)V (L/70 kg)V2 (L/70 kg)Q (L/hr/70 kgb)ka (1/hr)Tlag (hr)eResidual errora, %RSE (percent relative standard error of the estimate)b, Note that a power function of 0.75 was applied for clearance terms.c, logit(Vmax,inh), Vmax,inh = exp(tvVmax,inh)/[1 + exp(tvVmax,inh)].d, F = exp(tvF)/[1+exp(tvF)].e, Tlag, absorption lag time.考  察Estimate for θ(tv)ParameterCovariateCYP2C19 IM: tvVmax,inh +0.5CYP2C19 PM: tvVmax,inh +8.4γ-GT Grade >2: tvVmax,inh +0.8CRP >1.8: tvVmax,inh + 2.6Tablet: tvF-2.1Dry-syrup: tvF-1.1 本研究では、血液悪性腫瘍や原発性免疫不全症などを持つ基礎疾患のある患者のボリコナゾールの薬物動態に関して、CYP2C19遺伝子多型(IMおよびPM)、γ-GT、CRPがVmax,inhに、剤形がFに影響を与えていたことが明らかとなった。 経口投与および静注投与後の血中濃度推移は、既報で示される1次吸収過程のある混合線形および時間依存の非線形(Michaelis-Menten)排出を伴う2コンパートメントモデルで記述され、推定パラメータとして、Vmax、Km、CL、Q、V、V2は既報の小児集団と類似の値を示した。またVmaxに対する阻害率(Vmax,inh)に対する共変量として、CYP2C19遺伝子多型以外に、CRP上昇とγ-GT上昇が寄与する可能性が示唆された。さらにFに対して、剤形が影響を受けていた。 CRPに反映される炎症がボリコナゾールトラフ濃度の上昇と関連することが成人において報告され(%RSEa)1.17 (fixed)110.0 (52.6)Interindividual variabilityKm = tvKm × exp(ηKm)Vmax,1 = tvVmax,1 × exp(ηVmax,1)2.0 (112.6)2.4 (fixed)7.7 (11.6)75.3 (33.3)103.3 (18.0)24.6 (33.3)CLlin = tvCL × exp(ηCL)V,i = V2 × exp(ηV)V2,i = V3 × exp(ηV2)Qi = Q × exp(ηQ)2.3 (23.5)logit(F) = logit(F1)0.5 (fixed)0.2 (fixed)0.7 (4.9)ka = tvka × exp(ηka)Tlag = tvTlag × exp(ηTlag)るが13)、小児においても同様に認められることを示しており、CRP上昇は、ボリコナゾール高濃度曝露の要因となり、かつその影響は年齢によって異なってくることが示されている14)。CRP上昇の影響について年齢ごとに異なる係数を推定するモデル設計を行うことも検討する必要があると考える。 また、低濃度のボリコナゾールは主にCYP2C19で代謝されるが(〜93%)、高濃度の場合は主にCYP3A4で代謝されることがin vitro試験で証明されている15)。今回の症例では、CYP3A4、CYP2C9、およびCYP2C19の基質薬剤(タクロリムス、シクロスポリン、ミダゾラム、ジアゼパム、ポサコナゾール、ビンクリスチン、オメプラゾール、ランソプラゾール、フェンタニル)を同時に投与していた症例が35例存在した。このため今後の検討としてCYP2C19遺伝子以外の代謝酵素の個体間変動、および併用薬への影響についても検討する必要があると考える。 またこれまでの報告では、小児患者のうち原疾患114

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