臨床薬理の進歩 No.44
131/235

*1 TAMURA YUICHI はじめに要   旨 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、従来の抗がん剤と異なる作用機序を持ち、近年では多くの適応疾患・レジメンに導入されるようになっている。この抗がん剤はこれまでの抗がん剤とは異なり、薬剤自体はがん細胞への細胞傷害性を持たない。がん細胞が免疫細胞から攻撃されないようにして目的 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は心筋炎を含む自己免疫性の副作用を誘発することがあるがサーベイランス報告は少ない。本研究では前向きスクリーニングプロトコールを作成し、投与されたすべての患者において心筋炎のモニタリングを実施した。方法 ICIを投与された連続126例の患者を前向きに登録した。投与開始前および開始後7±3日、14±3日、21±3日、60±7日の時点でバイタルサイン、バイオマーカー、心電図、胸部X線写真、心エコー図を評価した。結果 18例(14.3 %)がトロポニンI上昇を示し、うち13例(10.3 %)が臨床的に心筋炎を疑う徴候を呈した。13例中4例(3.2 %)でICIを中止したが、致命的な事象は認められなかった。心筋炎は重症度にかかわらず投与開始早期から出現していた(中央値44日)。結論 心筋炎の頻度は既報告より高かったが、ほとんどは軽症であり慎重な観察のもとで治療を継続することが可能であった。国際医療福祉大学医学部循環器内科学いる“自己偽装分子”であるPD-1をブロックすることで、自己のT細胞ががん細胞を攻撃できるようにするという全く新しい機序による抗がん作用をもたらしている。すなわち、いわゆる化学療法とは異なる免疫療法を施すわけであり、副作用の面においても他の抗がん剤とは異なる性質を示す。 図1に示すように、ICIはがん細胞が免疫寛容を引き起こすために発現しているPD-L1をブロックKey words:免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、免疫関連有害事象(irAE)、スクリーニング、心筋炎、トロポニンⅠ117PD-L1(+)■■■■図1 ⾃⼰免疫ががん細胞だけではなく正常細胞も攻撃することによって起こるirAE田村 雄一*1免疫チェックポイント阻害薬投与に伴う心筋障害の包括的解析Comprehensive analysis of myocardial injury associated with administration of immune checkpoint inhibitors

元のページ  ../index.html#131

このブックを見る