臨床薬理の進歩 No.44
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謝  辞示唆している。骨格筋における筋炎と心筋炎の交差反応に関する報告もあることから、CK上昇が重症心筋炎の初期のバイオマーカーである可能性を支持している。 本研究は、これまで不明であったICI関連心筋炎の発症率とその詳細について包括的な情報を提供するものである。すべての臨床検査を網羅的に行うことは必須ではないが、CKやトロポニンIなどの特定のバイオマーカーによるスクリーニングは、心筋炎の早期発見と重症化予防に有用であると考えられる。さらに中等度から重度の心筋炎を発症したすべての患者がICI治療の中止を必要としたにもかかわらず、致命的な症例がなかったのは、スクリーニングにより早期介入が可能であったためと考えられる。我々の結果は、今後、より大規模な前向きコホートでの研究によって検証される必要がある。 本研究は、リアルワールドにおけるICI治療患者の前向きスクリーニングに基づく心筋炎の頻度に関する知見を提供するものである。その頻度は予想以上に高かったが、ほとんどの症例は無症状または軽度であり、慎重な観察のもとでICI治療を継続することが可能であった。また、心筋炎の発生はICI治療の初期に確認された。この結果から、ICI投与直後に心血管系スクリーニングを実施することが望ましいと考えられる。さらに、本研究では、CK上昇がICI関連心筋炎の発症前スクリーニングバイオマーカーとして有用である可能性が示された。患者のリスク層別化のため、またICI治療中の患者をモニタリングするこの方法の検証のため、さらなる研究が必要である。 著者に特に申告すべきCOIは存在しない。 本研究の支援をいただいた臨床薬理研究振興財団に篤くお礼申し上げます。 なお、本研究はすでに英文原著論文として出版されている6)。123

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