臨床薬理の進歩 No.44
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表1 評価期間および有効性評価の定義対象と方法公知申請により「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外検討会議」および「薬事・食品衛生審議会」で検討された結果、2017年に抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)に対してオランザピン使用の適応が拡大された。しかしながら、小児に対する制吐剤としてのオランザピン使用に関しては、薬物動態試験が行われておらず、その至適投与量は解明されていない。 オランザピンは血中濃度と有効性および有害反応の関連性が認められることや、個体差が大きいことが知られているため、精神科領域ではTherapeutic drug monitoring(TDM)が強く推奨されている薬剤である5)。オランザピンの個体差の要因としては、性別や年齢6)に加え、遺伝子多型の存在が報告されており、代謝酵素に関連するUGT1A47)やCYP1A28)、CYP2D69)の遺伝子多型により、オランザピンの代謝能が異なることが示唆されている。さらに、腸管における薬物排泄や血液脳関門に発現し、中枢移行性に関与するABCB1の遺伝子多型も報告されており10)、オランザピンの薬物動態における個体差に関与している可能性がある。 そこで、本研究は、オランザピンの血中濃度を測定し、制吐作用の有効性や安全性との関連性を見出すと共に、オランザピンの薬物動態に影響を及ぼす因子を検討し、小児がん患者に対する、制吐剤としてのオランザピンの至適投与量を見出し、投与設計を確立することを目的とした。対象患者 本試験は、2020年11月から2022年9月までに評価期間Total Control (TC)Complete Control (CC)Complete Response (CR)Partial Response (PR)有効性の評価全期間急性期遅発期化学療法開始から化学療法終了120時間後化学療法開始から化学療法終了24時間後化学療法終了24時間後から化学療法終了120時間後「嘔吐なし」かつ「嘔気なし」「嘔吐なし」かつ「嘔気なし」または「軽度嘔気あり」「嘔吐なし」「嘔吐1回以下」国立成育医療研究センターで小児悪性疾患に対して、従来の制吐剤(NK1受容体拮抗薬および5-HT3受容体拮抗薬等)では制吐効果が不十分であり、新たな制吐剤としてオランザピンを投与された20歳未満の小児患者を対象とし、患者はあるいは保護者から本試験に参加することの同意が文書で得られた患者を対象とした。本試験は国立成育医療研究センターの倫理委員会による審査をうけ、承認を得て行った(承認番号2020-112)。オランザピン血中濃度測定 オランザピンの血中濃度採血時期はTDMガイドライン5)を参考に、オランザピン投与12時間後に検体採取を行った。オランザピンは東京化成工業株式会社から購入し、内標準物質である安定同位体のオランザピン-D3はTronto Research chemicalsから購入した。検体処理方法や測定方法はJosefssonらの報告11)を参考に採血処理を行い、液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC-MS/MS)を用いて測定を行った。具体的な方法は、血清200 µLにTris hydroxymethyl aminomethane(TRIS)bufferおよび内標準物質であるオランザピン-D3を加え混合する。その後、methyl-tert-butyl etherを加え、遠心分離し、有機相と水相に分け、上澄みの有機相を採取し、蒸発乾固を行い、残留物を移動相で溶解し試料とした。LC-MS/MSはXevo TQ-s microタンデム四重極型質量分析計(日本ウォーターズ株式会社、東京)に接続されたAcquity H-Class UPLCシステムで構成され、試料はHypersilTM BDS C18カラム(2.1 × 50 mm、粒子径2.1 mm)で分離し、グラジエント溶出法を用いて測定を行った。移動相は、0.05%ギ酸を含んだ10 mMギ酸アンモ126

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