臨床薬理の進歩 No.44
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結  果ニウム水溶液(A)、0.05%ギ酸を含んだメタノール溶液(B)とし、流速0.3 mL/分で溶液Bの混合比率を2.5分間で0%から60%に直線的に変化させ、1検体あたり合計4分かけて測定を行った。質量分析は、陽イオンのエレクトロスプレーイオン化(ESI)による多重反応モニタリング(MRM)モードで行った。MRMトランジションは、オランザピンがm/z 313.0→255.7、オランザピン-D3がm/z 316.0→255.7であった。オランザピンの検量線の範囲は1-100 ng/mLで行った。遺伝子多型解析 患者の血液からDNAを抽出し、UGT1A4、CYP1A2、CYP2D6およびABCB1の既に報告7〜10)されている遺伝子多型を対象に、サンガー法を用いて遺伝子多型の解析を行った。UGT1A4はc.142T>G(*3, rs2011425)、CYP1A2はc.-3860G>A(*1C, rs2069514)およびc.-163C>A(*1F, rs762551)、CYP2D6はc.506-1G>A(*4, rs3892097)、CYP2D6欠損(*5)およびc.100C>T(*10, rs1065852)、ABCB1はc.1236C>T(rs1128503)、c.2677G>AまたはG>T(rs2032582)、およびc.3435C>T(rs1045642)を対象とした。評価項目 有効性の評価に関しては、化学療法開始から化学療法終了120時間後までを全期間とし、そのうち化学療法開始から化学療法終了後24時間後までを急性期、化学療法終了24時間後から化学療法終了120時間後までを遅発期と定義し、各期間における1日の嘔吐回数および嘔気の調査を行った。嘔気の評価は、「なし」、「軽度」、「中等度」、「重度」の4段階で患者自身による評価を行った。また、有効性評価の指標は既報12,13)を参考に、対象期間中に「嘔吐なし」かつ「嘔気なし」の場合はTotal Control(TC)、「嘔吐なし」かつ「嘔気なし」または「軽度嘔気あり」の場合はComplete Control(CC)、「嘔吐なし」の場合はComplete Response(CR)、「嘔吐1回以下」の場合はPartial Response(PR)と定義し(表1)、全期間および急性期、遅発期のTC、CC、CR、PR割合を調査した。また、全期間のCR率とオランザピン血中濃度との関連性を検討した。安全性の評価は、オランザピン最終投与7日後までの有害反応をCTCAE ver5.0を用いて評価した。なお、オランザピンによる傾眠の評価は、0は眠気なし、10が最も眠気が強いとして、0〜10までの11段階による評価を行った。統計解析 本研究での統計解析は全て、SPSS ver. 28(SPSS IBM Japan Inc、 Tokyo、Japan)を使用して行った。患者背景 本試験の対象患者は、合計14名であり、制吐剤としてオランザピン投与を行った化学療法施行数は17コースであった。患者背景を表2に示す。対象患者の年齢の中央値(範囲)は、13.3歳(9.8〜17.9)であった。オランザピンの体重あたりの投与量の中央値(範囲)は0.067 mg/kg(0.046〜0.139)、投与期間の中央値(範囲)は6日(3〜6)であった。オランザピン初回投与12時間後の血中濃度の中央値は4.6 ng/mL(<1.0〜33.0)であり、1名は感度未満(1.0 ng/mL未満)であった。オランザピンの有効性評価 オランザピンを投与した化学療法17コース中、全期間におけるTCは5コース(29%)、CCは12コース(71%)、CRは14コース(82%)、PRは15コース(88%)であった。急性期におけるTCは8コース(47%)、CCは13コース(76%)、CRは15コース(88%)、PRは15コース(88%)であった。遅発期におけるTCは12コース(71%)、CCは14コース(82%)、CRは14コース(82%)、PRは17コース(100%)であった(図1)。127127

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