臨床薬理の進歩 No.44
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謝  辞利益相反糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡の副作用症例が報告されていることから、 2002年に緊急安全性情報(イエローレター)が配布されている16)。本試験では、重篤な高血糖症例は認められなかったものの、制吐剤としてオランザピンを使用する場合、デキサメタゾン等のステロイドを併用している症例も多いため、血糖値の測定は必ず行う必要がある。さらに、1症例において一過性のGrade4の高トリグリセリド血症が認められた。この患者は、治療薬としてデキサメタゾンやL-アスパラギナーゼを併用しており、高トリグリセリド血症のリスクが高い患者であった。オランザピンの使用する場合、ステロイドの併用の有無に加え、化学療法の内容を考慮して、オランザピンの使用の検討やより厳重な副作用モニタリングを行う必要がある。 本試験では症例数が少なく、小児がん患者に対する制吐目的のオランザピンの至適投与量の検討はできていない。海外での成人における制吐目的のオランザピン投与量は10 mgとされているが3)、本邦における成人を対象とした試験15)では、5 mgへ減量することにより制吐効果を低下させることなく、傾眠の有害反応の頻度が少なくすることが可能であったと報告されている。そのため、小児においても日本人を対象としたオランザピンの至適投与量の検討が必要であり、今後症例数を増やし、引き続き有効性や安全性の評価と共に検討していく予定である。 本試験の結果から、制吐目的のオランザピンは日本人小児がん患者においても一定の効果が認められ、厳重な副作用モニタリングを行うことにより、安全に投与可能であった。 本研究の遂行にあたり、研究助成を賜りました公益財団法人臨床薬理研究振興財団に深く感謝申し上げます。 本研究に関して、開示すべき利益相反はありません。131

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