臨床薬理の進歩 No.44
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*1 MASUDA TAKAHIRO *2 TAKAHASI KEITA *3 UNO KOHEI *4 FUJISAKI MUNEHARU *5 TANISHIMA YUICHIRO *6 IKEGAMI TORU *7 YANO FUMIAKI はじめに要   旨 胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;GERD)は、胃食道逆流により引き起こされる食道粘膜傷害と、煩わしい症状のいずれかまたは両者を引き起こす疾患である。本邦における有病率は約10%と推定され1)、一般診療でよく遭遇するcommon diseaseである。 新たな酸分泌抑制剤であるボノプラザンが2014年12月に臨床使用可能となった。ボノプラザンは背景 胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;GERD)は、胃食道逆流により引き起こされる食道粘膜傷害と、煩わしい症状のいずれかまたは両者を引き起こす疾患である。ボノプラザンは将来的にGERDの第一選択薬になり得ると期待されているが、昨今、ボノプラザン抵抗性GERD患者が一定数存在することが明らかとなり、臨床上の問題となっている。今回、ボノプラザン抵抗性GERD患者の酸分泌状態を評価し、その病態について検討した。対象と方法 ボノプラザン抵抗性GERDの定義を満たした患者4例(Case 1~4)を対象とし、ボノプラザン20 mg/dayを8週間以上継続内服した状態で、HRM検査およびMII-pH検査を実施し、その結果及び患者背景につき調査した。結果 HRM検査では、Case 1, Case 2、Case 3が食道無蠕動、Case 4が正常食道蠕動であった。MII-pH検査における胃内酸曝露時間率は、Case 1、Case 4が0%、Case 2が27.6%、Case 3が8.4%であり、いずれにおいても胃酸分泌は抑制されていた。Case 3は食道知覚過敏症、Case 4は機能性食道障害と診断した。結論 ボノプラザン抵抗性GERD患者においても、ボノプラザンは十分に胃酸分泌を抑制していることが確認された。ボノプラザン抵抗性食道炎の原因としては、十二指腸液の逆流と食道運動機能障害に伴う逆流液のクリアランス低下が考えられた。また、食道知覚過敏症と機能性食道障害がボノプラザン抵抗性GERD症状の原因となり得ることが確認された。東京慈恵会医科大学 外科学講座 上部消化管外科          同   上          同   上          同   上          同   上東京慈恵会医科大学 外科学講座 肝胆膵外科東京慈恵会医科大学 外科学講座 上部消化管外科カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(potassium-competitive acid blocker;P-CAB)であり、従来のプロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitor;PPI)と比して、①効果発現までの時間が約2時間と速い、②薬物代謝酵素CYP2C19の遺伝子多型の影響を受けにくい、③半減期が約9時間と長い、④食前・食後を問わずに内服できるという利点があり2)、この数年で使用量が大きく伸びている。また、こうした薬物動態上の特徴から、症状出現時のみ随時服用するというオンデマンドKey words:GERD、ボノプラザン、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー、24時間多チャネル・インピーダンスpH検査、High-Resolution Manometry133増田 隆洋*1 高橋 慶太*2 宇野 耕平*3 藤崎 宗春*4谷島 雄一郎*5 池上 徹*6 矢野 文章*7ボノプラザン抵抗性GERD患者の酸分泌状態の評価Gastric acid secretory profile in patients with vonoprazan refractory GERD

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